土木施工管理技士は、私達の生活に欠かすことのできないライフラインの基盤を整備する職業です。近年は、地震や台風による災害復旧工事、老朽化した建物の建て直しがメインとなっており生活に密着した仕事ができるため、とてもやりがいのある仕事です。
仕事内容はとても幅広く、指示する立場の資格でもあるので国家資格として位置付けされています。そんな土木施工管理技士になるためにはどうすればいいのか。その資格の概要や資格を取得することによるメリット、将来性について詳しく紹介します。
目次
土木施工管理技士とはどんな資格か
仕事内容
土木施工管理技士とは、国家資格である「施工管理技士」のひとつで、土木工事の施工管理を行う仕事です。施工管理と一言で言ってもその仕事内容は多岐に渡ります。大まかに大別すると「安全管理」、「工程管理」、「品質管理」と3つあります。どれも非常に重要なことで作業員の健康状態を把握することも、仕事を納期までに終わらせることも、品質に不具合がないか確認することも仕事内容となってきます。
これら以外にも大切な施工管理は他にもあり、工事現場のコスト管理、近隣住民への説明、苦情対応といった仕事も業務のひとつとなります。
1級と2級の違い
土木施工管理技士の資格は1級と2級に分かれています。違いは何かというと、請負代金の合計が4,000万円以上の工事は1級の資格を保持していないと責任者になることができないという点です。
このことは、国土交通省の「監理技術者制度運用マニュアル」にも記載されており、4,000万円以上の工事では主任技術者に代えて監理技術者を配置することと定められています。逆に工事の請負代金が4,000万円未満であれば2級土木施工管理技士の資格でも責任者となることができます。
もう一つ1級と2級で異なる点は受験資格です。受験資格の概要については後述してありますので、そちらをご覧ください。
土木施工管理技士が活躍できる場所
土木施工管理技士となり活躍できる場所は皆さんの身近な生活に関わるものばかりで、たくさんの種類があります。例をいくつか挙げましょう。
・道路
・橋梁
・河川
・鉄筋
・災害復旧
・トンネル
・区画整理
・ダム
発注者から依頼された仕事を現場作業員と打ち合わせをしながら竣工まで監督することが役割となります。近年では、災害時の緊急対応としての役割も増えてきましたので、活躍できる場所はさらに広がってきています。
土木施工管理技士になるには
試験概要
1級、2級で若干試験内容は異なるのですが、共通事項を先に説明します。どちらも学科試験と実地試験があり学科試験は四肢択一のマークシート方式で、実地試験は記述式の試験となります。
出題された問題にすべて答える必要はなく、各科目ごとに解答数が限られているのが特徴です。
【1級土木施工管理技士】
■学科
科目 | 出題数 | 解答数 |
---|---|---|
土木一般 | 15問 | 12問 |
専門土木 | 34問 | 10問 |
法規 | 12問 | 8問 |
共通工学 | 4問 | 4問 |
施工管理法 | 31問 | 31問 |
■実地(令和元年度)
実地試験は必須問題と選択問題があります。必須問題は経験記述となっており、毎年出題項目が変わるので、対策を怠らないようにしておきましょう。
「必須」品質管理についての施工経験記述1問
「選択1」以下5問から3問選択
①土木 | 軟弱地盤上の盛土施工の留意点 |
②コンクリート | コンクリート構造物の施工 |
③品質管理 | 盛土の品質規定方式及び工法規定方式による締固め管理 |
④安全管理 | 車両系建設機械による労働者の災害防止 |
⑤建設副産物 | 特定建設資材廃棄物の再資源化等の促進 |
「選択2」以下5問から3問選択
①土木 | 切土・盛土の法面保護工 |
②コンクリート | コンクリートを打ち重ねる場合の施工上の留意点 |
③品質管理 | コンクリート構造物施工時の劣化防止対策 |
④安全管理 | 移動式クレーンの労働災害防止対策 |
⑤施工計画 | 施工計画書に記載すべき内容 |
【2級土木施工管理技士】
■学科
2級土木施工管理技士の試験は出題される科目は1級と似ていますが、出題数が違います。
科目 | 出題数 | 解答数 |
---|---|---|
土木一般 | 11問 | 9問 |
専門土木 | 20問 | 6問 |
法規 | 11問 | 6問 |
共通工学 | 4問 | 4問 |
施工管理法 | 15問 | 15問 |
■実地(令和元年度)
「必須」施工経験記述1問
①土木 | 2問 |
②コンクリート | 2問 |
「選択」
①品質管理 | 2問から1問選択 |
②安全管理、工程管理 | からどちらか1問選択 |
■試験日程と受験費用
各試験の試験日、合格発表、受験費用は以下の通りです。
1級は学科・実地試験ともに一年に一回しかありませんが、2級の試験は学科試験のみ前期と後期に分かれており、どちらかを受験した合格者のみが実地試験を受けることができます。2級の場合、学科試験のみを受験される場合は4,100円の受験費用が必要となり、同様に実地試験のみを受験する場合には4,100円となります。
資格名 | 試験日 | 合格発表 | 受験費用 |
---|---|---|---|
1級 学科試験 | 令和2年7月5日(日) | 令和2年8月20日(木) | 8,200円 |
1級 実地試験 | 令和2年10月4日(日) | 令和3年1月15日(金) | 8,200円 |
2級 学科試験(前期) | 令和2年6月7日(日) | 令和2年7月7日(火) | 4,100円 |
2級 学科試験(後期) | 令和2年10月25日(日) | 令和3年1月15日(金) | 4,100円 |
2級 学科・実地試験 | 令和2年10月25日(日) | 令和3年2月3日(水) | 8,200円 |
受験資格
受験資格は学歴と実務経験年数の違いにより違います。また、1級と2級でもそれぞれ必要とされる実務経験年数が違うので注意しておきましょう。詳しくは以下の表をご覧ください。
・土木施工管理技士1級の受験要件
学歴 | 必要実務経験年数 |
---|---|
大学卒か専門学校を卒業している者(高度専門士) | ・指定学科:3年 ・それ以外では4年6ヶ月 この年数のうち、1年以上の指導監督的実務経験年数が含まれていること。 |
短期大学か高等専門学校卒業、専門学校を卒業している者(専門士) | ・指定学科:5年 ・それ以外では7年6ヶ月 この年数のうち、1年以上の指導監督的実務経験年数が含まれていること。 |
高等学校や専門学校を卒業 | ・指定学科:10年 ・それ以外では10年6ヶ月 この年数のうち、1年以上の指導監督的実務経験年数が含まれていること。 |
その他の学歴しかない場合 | 実務経験15年 この年数のうち、1年以上の指導監督的実務経験年数が含まれていること。 |
・土木施工管理技士2級の受験要件
学歴 | 必要実務経験年数 |
---|---|
大学卒 | ・指定学科:1年 ・それ以外では1年6ヶ月 |
短期大学・高等専門学校 | ・指定学科:2年 ・それ以外では3年 |
高等学校 | ・指定学科:3年 ・それ以外では4年6ヶ月 |
その他の学歴しかない場合 | 実務経験8年 |
1級と2級の受験要件を見てみると、どちらも実務経験を必要としていることが分かります。それだけ現場での経験がこの試験においてとても重要であるということです。知識だけでは現場監督になれないということをはじめに理解しておきましょう。
受験する際は、自分が必要な実務経験を満たしているか、会社と確認して申し込むようにしましょう。実務経験年数は前職での施工管理経験も合算することができます。
合格率と難易度
1級と2級の合格率をまとめましたので、以下をご確認ください。
参照:総合資格学院
1級については平成27年度から令和元年度までの集計です。
【1級土木施工管理技士 合格率】
区分 | 27年度(%) | 28年度(%) | 29年度(%) | 30年度(%) | 令和元年度(%) |
---|---|---|---|---|---|
学科 | 54.6 | 55.0 | 66.2 | 56.5 | 54.7 |
実地 | 37.3 | 36.7 | 30.0 | 34.5 | 45.3 |
2級は平成29年度から前期、後期の試験となりましたので、平成29年度以降は前後期で分けて集計されています。
【2級土木施工管理技士 合格率】
区分 | 27年度 前期(%) |
28年度 前期(%) |
29年度 前期(%) |
29年度 後期(%) |
30年度 前期(%) |
30年度 後期(%) |
令和元年度 前期(%) |
令和元年度 後期(%) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
学科 | 66.5 | 48.3 | 58.4 | 71.6 | 50.3 | 63.4 | 61.9 | 67.1 |
実地 | 35.7 | 29.9 | – | 34.3 | – | 35.0 | – | 39.7 |
1級と2級の合格率を比較してもらうとわかると思いますが合格率は、学科試験が50~70%台で推移しており、実地試験が30~40%台となっています。つまり、学科は合格できても、その後の実地試験でなかなか合格できないという人が多いようです。
ですが、学科試験の合格率はそれほど低いとはいえないので難易度はあまり難しくないと捉えても良いでしょう。
土木施工管理技士の資格を取得するメリット
資格を取得することは自分自身への成長にも繋がりますが、企業からの評価が大きいというのが最大のメリットと言えます。代表的なメリットを3つ紹介しましょう。
監理技術者として名乗ることができる
1級であれば監理技術者に、2級であれば主任技術者として現場の責任を担うことができます。現場責任者として法的に資格が必要でもあるのですが、それ以前に1級は4,000万円以上の工事を担当できるのでやりがいはかなり大きいです。
社内での昇給や昇進で有利
職場にもよりますが、建設業界では1級土木施工管理技士の取得は最高位に位置します。その為、資格取得を条件に昇給、昇進を推進している職場もたくさんあります。その理由は、資格保持者がいることで国から企業へ、技術評価点が付与されるからです。1級では「5点」、2級では「2点」の点数となります。
転職する際に有利
建設業は現在、人手不足と言われています。その理由は団塊世代の大量退職が背景にあり、若い人は仕事がきついと感じて敬遠しているからです。その為、資格無しでも募集されている企業もありますが、資格があるだけで転職できる確率は格段に上がります。
若手技術者が不足している建設業では、できるだけ資格を保持している優秀な技術者が欲しいので特に1級を保持していると転職の際も優遇的に評価されるはずです。
土木施工管理技士の将来性や働き方は?
将来性について
土木施工管理技士の年収は一般的に300万~500万円の求人が多いですが、建設業では経験値に比例して年収が上がる傾向があります。年収をアップさせたいという方は少しでも多くの経験を積むように努力しましょう。今後、台風や地震による災害は確実に増えてくるでしょうし、高速道路の老朽化対策など需要はますます伸びてくるものと考えられます。
土木施工管理技士のやりがいとは?
現場を管理している立場上、どうしても残業が多くなりがちです。天候にも左右されるので休みが無かったりする場合もあります。体力的にもハードで根気がなければ続けることは難しいでしょう。
ですが、その分やりがいはとても大きいという面を持ち合わせています。人ではなく自然が相手の仕事で、自分が指揮して造った工作物が地図に載るというのは嬉しいものです。
最近ではAIの技術を建設業にも取り入れるようになり、業務の効率化も進んできています。幅広い知識が必要となってきますが、建設業は今後も無くなる職業ではないのでオススメです。
まとめ
今回は、土木施工管理技士の資格概要や仕事内容についてご紹介しました。
建設業界で働き続けるならば、施工管理技士の資格は取っておいて損はありません。決して簡単に取れる資格ではないですが、自分が任せてもらえる仕事は大幅に変わります。資格取得により企業評価も上がり、年収アップにも繋がるので、やりがいを感じられる仕事をしたいという方に是非オススメしたい資格です。