第一級デジタル通信の全体像 特定の工事で必須の 国家資格のため、高い将来性が期待できます。
第一級デジタル通信の全体像
正式名称 | 工事担任者 第一級デジタル通信 |
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仕事内容 | デジタル伝送路設備に対する端末設備などの接続工事の実施または監督 (総合デジタル通信用設備は「アナログ通信」の方に含まれるため対象外) |
年収 | 300~600万円 |
将来性 | 高い/国家資格のため特定の工事で必須 |
資格メリット | 就職・転職に活用できる 仕事の幅が広がる(キャリアアップ) |
参照:電気通信の工事担任者とは?
※DD第一種(旧区分)の情報をもとに記載(執筆時点(2021年6月12日)で合格者がいなかったため)
どのような資格か? デジタル伝送路設備の接続工事に必須の資格
第一級デジタル通信は、電気通信設備の工事に必要な国家資格である「工事担任者」の区分の一つです。工事担任者の試験制度改正にともない、令和3年4月1日に名称がDD第一種から第一級デジタル通信に変更されました。
工事担任者とは、端末設備などを電気通信回線に接続する工事において、自ら工事を行ったり施工を管理・監督したりする担当者を指します。
こうした工事では通信設備に関する一定の知識が求められることに加えて、工事の不備がほかの回線利用者・設備に大きな影響を与える可能性があります。
接続技術を確保してトラブルを未然に防ぐため、工事担任者試験の合格者(工事担任者)の立ち合いがないと工事ができない制度になっています。工事担任者は資格の区分ごとに担当できる工事範囲が異なるため、実施したい工事に適したものを取得している必要があります。
デジタル通信の資格には第一級と第二級があり、上級資格の第一級デジタル通信では総合デジタル通信用設備を除くすべてのデジタルデータ回線の接続工事を担当できます。
※令和3年3月31日までに取得したDD第一種については、第一級デジタル通信と同一のものとみなされます。
資格取得のメリット 社内評価アップ / 転職時に有利 / 別資格取得 につながります。
社内評価のアップが期待できる
前述の通り、第一級デジタル通信は通信回線の接続工事を行うために必要な国家資格で、第二級では扱えない接続工事を担当することも可能です。すなわち、第一級デジタル通信を持っていない場合と比べて確実に業務の幅が広がります。
さまざまな業務を任せられる貴重な人材になれば社内での評価も上がり、キャリアアップにつなげやすくなります。ほかにも、昇進ほど大きな変化がないにせよ、第一級デジタル通信の取得により資格手当として月額数千円~数万円が支給される企業も珍しくありません。
今後のキャリアで少しでも使う可能性がある場合、余裕があれば早めに取得しておくとメリットが大きくなるでしょう。
技術力のアピールにつながる
第一級デジタル通信を取得することにより、その過程で得た知識や取得後の経験が転職時などにアピールできます。
第一級デジタル通信の取得だけで技術力を証明するのは難しいかもしれませんが、受験勉強を通して通信回線設備や関連する工事についての専門知識が身につきます。また、そもそも第一級デジタル通信がないと関われない工事の経験を積めるため、転職先にとって魅力的なアピールができます。
技術職の転職では実務経験が必須の求人も多く、いかに自分の技術力を証明するかは重要なポイントです。
電気通信事業への転職を検討している人は、将来の選択肢を広げるために取っておいて損はないでしょう。
情報通信エンジニア資格を申請できる
第一級デジタル通信を持っている人は、以下の手順で情報通信エンジニア資格を取得できます。
- 日本データ通信協会に認定研修の実施を申請する
- 申請承認後、用意されている専用教材で研修を行う
- 研修に合格すると、資格者証が郵送にて到着する
情報通信エンジニア資格は、工事担任者を含む特定の国家資格を持つ人が認定研修を受けることによって取得できます、資格の更新には年1回の研修が義務付けられているため、持っていると最新技術・知識を有する技術者である証明が可能です。
年収について 第一級デジタル通信(旧区分:DD第一種)が対象の求人情報の例
第一級デジタル通信(DD第一種)が対象の求人としては、以下のような例が挙げられます。
【A社】
給与 | 370~640万円 |
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業務内容 | 有線ネットワーク工事の技術者・施工管理 |
応募資格 | 第二種電気工事士・工事担任者DD第一種・高所作業車運転技能者のうちいずれか、普通自動車運転免許(AT限定可)、配線工事など関連業務の従事経験 |
【B社】
給与 | 270~600万円 |
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業務内容 | 発変電所における電気/消防設備の工事・点検、機器の更新/高機能化 |
応募資格 | 第二種電気工事士、甲種消防設備士、工事担任者DD第一種、普通自動車運転免許(AT限定可) |
一方、第一級デジタル通信(DD第一種)以下、すなわち第二級デジタル通信やDD第二種・第三種も対象の求人例は以下の通りです。
【C社】
給与 | 280~470万円 |
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業務内容 | 電気通信工事の技術者・施工管理 |
応募資格 | 普通自動車免許、第二種電気工事士、工事担任者DD第三種 |
【D社】
給与 | 340~440万円 |
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業務内容 | 通信設備のメンテナンス |
応募資格 | 普通自動車運転免許(AT限定可)、電話交換機設備のメンテナンス経験、電気工事士、工事担任者資格DD第一種/第二種 |
第一級デジタル通信のみが対象の求人とそれ以下も対象の求人の給与を比べると、最低額についてはそれほど差がありません。しかし、最高額は上記の求人例のように前者の方が高い傾向があります。
年収アップを実現するためのポイント
第一級デジタル通信を利用した年収アップのポイントとしては、以下の3つが挙げられます。
- 第一級デジタル通信でしか扱えない工事の実務経験を積むこと
- 情報通信エンジニア資格の認定を受けること
- 転職すること
技術職において転職市場や社内で高く評価されたいのであれば、実務経験を積むのが一番の近道といえるでしょう。第一級デジタル通信では第二級と異なり対象設備のデータ入出力速度の制限がないため、第二級で対応できない工事の経験を積めば未取得者に一歩リードできます。
技術力をより魅力的にアピールするためには、本記事で紹介した情報通信エンジニア資格も取得しておくのがおすすめです。年一回の研修によって常に最新の技術・知識を身につけられるので、評価アップだけでなく自身の成長という面でも役立つでしょう。
また、転職市場では第一級デジタル通信が必須条件または歓迎条件になっている求人も多く公開されています。第一級デジタル通信を取得することで好待遇な雇用条件を勝ち取れる可能性が高まります。
求人条件としては設定されていない場合でも資格手当の支給対象となっていることがあるので、年収を軸に転職先探しをするときは説明文をよく読み込んでみてください。
将来性について 第一級デジタル通信は特定の工事で必須の将来性のある資格
本記事で繰り返し述べているように、第一級デジタル通信は特定の回線接続工事に必須の国家資格であり、将来性は十分あるといえます。
第一級デジタル通信が工事対象としているのは、すべてのデジタルデータ回線です。デジタルデータ回線は私たちの生活にとって欠かせないものとなっていますので、これらの工事の需要がとつぜん落ち込む可能性は少ないでしょう。
資格手当の獲得やキャリアアップにも役立てられますので、技術革新で従来のデジタルデータ回線が使われなくなるといった事態にならない限り有用な資格です。
仕事内容について 代表的な仕事は5つあります。
01
デジタルデータ回線の接続工事
第一級デジタル通信取得者は技術者として接続工事の実務を担当できます。
顧客宅にて光回線やWiFiなどに関連する端末設備・通信ケーブルなどの接続工事を実施する業務などがこれに当たります。
02
工事における設計や工程の管理
上記のように技術者として自ら工事を行うのではなく、工事における設計や工程などを管理するのも一般的な業務の1つです。
作業現場で監督業務を行ったり、報告書や施工計画書など工事に関連する書類を作成したりします。求人サイトでは技術者・管理者兼任の募集になっているものもあります。
03
電気通信設備の保守
電気通信設備の回線接続工事だけでなく、保守・メンテナンス作業も業務内容に含まれます。
通信ケーブル以外にもETCや信号機・発変電所など重要設備の保守作業を担っているため、世間への貢献度が高い業務です。
04
電気通信関連設備の設計
電気通信設備工事の周辺業務として、関連設備の設計を行う第一級デジタル通信取得者もいます。
こうした設計やデザインを行うためには電気通信設備についての知識が欠かせませんので、受験や実務で得た知識や経験が役立つでしょう。
05
防犯機器などの設置・取付
防犯カメラをはじめとする防犯機器を設置したり取り付けたりする業務です。
防犯機器を例に挙げましたが、回線そのものではなくこうした通信機器・端末の取り付け業務でも求人の歓迎条件に含まれていることがあります。
2つのケースを紹介 第一級デジタル通信取得者の1日の仕事の流れ
CASE1事業用店舗の建築施工管理
8:15 | 出勤 |
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8:30 | 図面などの各種書類をチェック |
9:00 | 作業現場へ移動、通信設備の工事・保守業務 |
12:00 | 休憩、昼食 |
13:00 | 通信設備の工事・保守業務、事務所へ移動 |
16:00 | 報告書、施工計画書などの作成 |
17:30 | 終礼、雑務 |
19:00 | 退勤 |
CASE2電気通信回線の端末設備のデザイン業務
8:45 | 出勤 |
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9:00 | 端末設備の設計およびデザイン業務 |
11:30 | 端末設備の点検・保守業務 |
12:00 | 休憩、昼食 |
13:00 | 端末設備の設計およびデザイン業務 |
16:00 | 会議 |
17:45 | 退勤 |
※いずれも第一級デジタル通信(旧区分:DD第一種)取得者のケース
第一級デジタル通信(DD第一種)を受験および取得するのは、社会人では電気通信業や電気通信業、電気工事業に従事する人が多いです。
具体的な業務内容としては、通信設備の工事および施工管理といった工事の実務、通信設備についての知識が要求される設計や営業といった周辺業務などが挙げられます。上記のモデルケースでは、CASE1は前者、CASE2は後者にそれぞれ該当します。