有機溶剤業務従事者教育は、塗装販売業、クリーニング業、清掃業、印刷業、製造業などあらゆる現場で必要となる資格です。
有機溶剤は揮発すると、高濃度の蒸気が発生し、吸い込むと中毒になる有害物質です。予防対策をきちんと身に付ける為、特別教育に準じた教育を受けるように労働安全衛生法で義務付けられています。
この記事では、有機溶剤業務従事者教育の概要や受け方について、詳しく説明していきます。
目次
有機溶剤業務従事者教育とは
なぜ講習を受ける義務があるのか
有機溶剤はとても揮発性が高く、蒸気となって作業者の呼吸を通じて体内に吸収されやすい性質です。また、油脂に溶ける性質があることから皮膚からも吸収されます。
体内に吸収されると、頭痛、めまい、失神など中枢神経をマヒさせる危険性を要しています。有機溶剤による中毒は適切な換気や保護具着用等で防止することは可能ですが、有機溶剤の特性や毒性の認識不足等に起因する労働災害が今でも多く発生しているのが現状です。
その為、労働安全衛生法にて有機溶剤業務に従事する者は、特別教育に準じた「労働衛生教育」を推進することと定められています。
有機溶剤業務に従事される方は、将来の健康被害を防止するために有機溶剤業務従事者教育を必ず受講をするようにしましょう。
有機溶剤業務従事者教育の対象になる業務
基本的には、塗装・洗浄・製造業等で使用時に有機溶剤中毒にかかる恐れのある業務を指します。
業務で使用する有機溶剤は全部で54種類あり、それについては講習の際に教わると思います。
ここでは対象となる業務についてわかりやすいように、いくつか例を挙げてみます。
有機溶剤業務従事者教育の対象になる業務(一例)
- シンナー、ラッカー等を扱う塗料販売業(塗装業を含む)
- 有機溶剤含有物を用いて行う印刷業
- ドライクリーニングで有機溶剤を取扱うクリーニング業
- 有機溶剤を入れたことがある燃料タンクやピット内での作業
- 接着のために有機溶剤等を塗布された物の接着業務
- 有機溶剤等を用いて⾏う試験⼜は研究業務
上記に挙げた例は、ごく一部です。
これ以外にも屋内作業場で対象となる所もあります。例えば、通り風が不十分な地下室、船倉、タンク、ピット内部、暗きょまたはマンホール、水管、ダクト内部といった業務も対象になります。
詳細は安全衛生情報センターにて掲載されていますので、ご自身の業務が該当するかどうか確認してみましょう。
有機溶剤業務従事者教育で学ぶこと
それでは、有機溶剤業務従事者教育ではどのようなことを学ぶのでしょうか。
有機溶剤業務従事者教育で学ぶ内容と時間を以下の表にまとめましたので、ご覧ください。
有機溶剤業務従事者教育の内容
実施内容 | 講習時間 |
---|---|
有機溶剤による疾病及び健康管理 | 1時間 |
作業環境管理 | 2時間 |
保護具の使用方法 | 1時間 |
関連法令 | 30分 |
合計 | 4.5時間 |
有機溶剤業務従事者教育では、有機溶剤の正しい取扱い方法や、呼吸用保護具の着用、作業環境の管理を学びます。
また、有機溶剤業務に常時従事する労働者に対して、雇入れの際、または当該業務への配置替えの 際に行う健康診断についても、安全に仕事ができるよう知識を習得します。万が一、有機溶剤による健康障害になった場合でも対応できるように応急措置の方法も学びます。
「有機溶剤による疾病及び健康管理」では、有機溶剤の種類や危険性について学びます。
またこの記事でも紹介しましたが、有機溶剤は多くの業種で使用されているので、有機溶剤を使用する業務に関しても知ることができます。
「作業環境管理」では、有機溶剤の区分表示について学びます。
例えば、有機溶剤には第一種から第三種まであり、第一種から順に危険度は下がっていきます。その種類を色分けして表示しなければならないと義務付けられています。また、貯蔵及び空容器の処理についてを学び、同時に適切な換気を行う為の保守点検、点検の方法についてを習得します。
「保護具の使用方法」では、その名の通り保護具の使用方法について学びます。
有機溶剤の保護具は、送気マスクや防毒マスク、防毒機能がある電動ファン付きの呼吸用保護具等となるので、これらの使用方法等について学習します。
「関係法令」では、労働安全衛生法などの有機溶剤業務従事者に関連する法令について学びます。
特別教育や安全衛生教育では、法令について学ぶカリキュラムが組まれていることが多くあります。
なお講習時間に関しては、法令で定めされた最低限の講習時間となりますので、実際には表記以上の講習が実施されることがあります。
有機溶剤業務従事者教育の講習会
ここでは、有機溶剤業務従事者教育の講習会の申し込み方法や所要時間について説明します。
他の安全衛生教育や資格試験を申し込む手順と同じで、特別変わったことをするわけではないので誰でも気軽に申し込めると思います。
講習は全国各地の安全衛生協会等が開催しております。受講は各機関のWebサイトのフォームからや、FAXやメール等申し込みができます。
また出張講習も行っている機関もあります。これは全国どこでも対応してくれるサービスで出張サービスになります。多くの従業員に対して一度に受講させたい時などは有効ですが、講師の出張費用が必要になるので料金はその分割高となります。
講習時間は全部合わせても計4.5時間ほどですので、一日で十分履修可能です。どの講習機関でも、基本的な内容や講習時間に大きな差はありません。
有機溶剤業務従事者教育はWebでも受けられる
有機溶剤業務従事者教育は研修センター等で受けることが一般的でしたが、最近ではWeb(オンライン)でも通信教育で受講することが可能となっています。時間や場所に制約されず、スキマ時間を活用して学習できる通信講座のメリットをご紹介しましょう。
最大のメリットはインターネット環境とパソコンまたはタブレットさえあれば、時間や場所を選ばず受講できるという点です。
講習を受講する為に講習機関に通う場合は、ご自身が通える範囲にその施設がなければ受講が困難となります。特に地方に住んでいる方は講習会場が遠方など不便な場合が多々あります。また、予約していた日程に急用が入り、出席できなくなるということもあり得ます。
一方で通信講座の利用を選択いただければ、日本全国どこに住んでいても受講が可能になります。
自宅や職場などで、インターネットが繋がる環境さえあれば、自分の好きな場所で手軽に学ぶことができます。
また、Webで受講できるので不明な点があれば何度でも動画を停止して再度確認することができます。通学スタイルの授業では、講師の話を停止することはできないので、こういった点もWeb受講の利点といえます。
Web受講でも通常の講習会の講習と同様に修了証を受け取ることは可能ですので、安心して申し込めます。
Web(オンライン)で有機溶剤業務従事者教育を受講しよう
今回は『有機溶剤業務従事者教育』の概要や受け方について説明をしました。
有機溶剤は、取り扱い方法を誤ると重大な災害となり、自身の身体にも害を及ぼす恐れがあります。そういった災害を起こさないようにしっかりとした知識を身に付けておくことは非常に重要です。知識が無いことが命取りになる可能性もあります。
普段の職場で何気なく有機溶剤を使っているという可能性もあるので、今一度、ご自身の作業内容で当てはまるかよく確認したうえで、講習の受講をするようお願い致します。
申し込み方法も複雑ではありませんし、Webで受講することも可能になっています。
時間と場所に制約されず受講することができるので気軽に申し込んでみてはいかがでしょうか。