第一種電気工事士資格は、電気工事業に就職する人や、将来的に開業を目指す人の足がかりになる資格です。そこで本記事では、第一種電気工事士資格でできる仕事、具体的な試験内容と対策法、合格率、合格に必要な勉強時間について解説します。第一種電気工事士資格取得に向け、勉強を始めたい方はぜひ参考にしてください。
目次
第一種電気工事士とは
電気工事士は、電気工事に欠かせない国家資格です。では、第一種電気工事士とはどのような資格なのでしょうか。以下で第一種電気工事士の概要、資格が活かせる現場を解説します。
第一種電気工事士の概要
ビルや住宅には電気設備があり、電気設備を安全に保つために電気設備工事を行う必要があります。電気設備工事を行うには、法令によって電気工事士の資格が必要となります。この電気工事士の資格には、以下2つの種別があります。
・第一種電気工事士:
第二種の範囲のほか、最大出力500Kw未満の工場やビルの工事に従事可能
・第二種電気工事士:
一般の住宅など、600v以下で受電する設備の工事に従事可能
第一種電気工事士は、ビルや小規模施設などの電気設備工事ができる資格であり、ビルメンテナンスなどの分野で活躍できる電気のスペシャリストといった位置づけです。一方、第二種電気工事士は一般の家庭で使用するレベルのものを扱う資格です。
電気工事士が活躍できる現場
電気工事士は、既存の建物に対する電気設備工事だけではなく、鉄道や建設工事現場などでも活躍します。建設業で電気工事士の仕事をしたい場合は、第一種電気工事士の資格はマストといえるでしょう。なお、建設業の届け出を行って電気工事専門の工務店を立ち上げる場合には、電気工事士のみの免状では仕事ができないので注意が必要です。
第一種電気工事士試験の内容と合格率
第一種電気工事士の試験内容と受験資格、免状交付、合格率について見ていきましょう。
【第一種電気工事士】筆記試験・技能試験の内容
第一種電気工事士の試験は、年に一度だけ実施されます。筆記試験と技能試験があり、例年10月に筆記試験があります。筆記試験に合格しなければ、12月の技能試験を受けることはできません。
技能試験で不合格となった場合には、次年度開催の試験に限り筆記試験が免除となり、実技試験の再試験を受けられます。
第一種電気工事士の筆記試験、技能試験の試験科目は次のとおりです。
1 | 電気に関する基礎理論 |
2 | 配電理論及び配線設計 |
3 | 電気応用 |
4 | 電気機器・蓄電池・配線器具・電気工事用の材料及び工具並びに受電設備 |
5 | 電気工事の施工方法 |
6 | 自家用電気工作物の検査方法 |
7 | 配線図 |
8 | 発電施設・送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性 |
9 | 一般用電気工作物及び自家用電気工作物の保安に関する法令 |
1 | 電線の接続 |
2 | 配線工事 |
3 | 電気機器・蓄電池及び配線器具の設置 |
4 | 電気機器・蓄電池・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法 |
5 | コード及びキャブタイヤケーブルの取付け |
6 | 接地工事 |
7 | 電流・電圧・電力及び電気抵抗の測定 |
8 | 自家用電気工作物の検査 |
9 | 自家用電気工作物の操作及び故障箇所の修理 |
筆記試験は四肢択一のマークシート方式で、一般問題が40問程度、配線図問題は10問程度、試験時間は140分です。
技能試験は、提示された配線図を完成させる内容で、支給される材料と持参の工具を使います。出題内容は、事前に公表される10問程度の候補問題の中から1問が選ばれます。試験時間は60分です。
なお、以下のいずれかに該当する場合、申請により筆記試験が免除されます。
前回(前年度)の第一種電気工事士筆記試験に合格した者 | 特に証明書類は必要ありません。 |
第一種、第二種又は第三種電気主任技術者免状の交付を受けている者 | 「電気主任技術者免状」の複写 |
旧電気事業主任技術者資格検定規則による電気事業主任技術者の資格を有する者 | (1)左記検定規則に基づく検定試験の合格者にあっては「合格証明書」、または「合格証書」の複写 (2)左記検定規則による認定学校(旧制の大学、工業専門学校、工業学校等)の卒業者にあっては「卒業証明書」、または「卒業証書」の複写 |
注)
1.第一種電気工事士試験は学校卒業による筆記試験の免除はありません。
2.筆記試験免除を証明する書類は、申込みと同時に試験センター本部事務局宛に別途送付してください。
3.筆記試験免除対象者の方も申込書受付期間は、筆記試験から受験する方と同期間です。
第一種電気工事士の受験資格と免状交付について
第一種電気工事士の試験は受験資格はなく、誰でも受験可能です。技能試験に合格し、3年以上の実務経験を積むと免状が交付されます。なお、実務経験は試験合格以前のものでも対象となるため、合格時に実務経験年数を満たしている場合はすぐに交付の申請が可能です。
実務経験年数は、一般的な電気工事であれば問題なく満たせるでしょう。ただし、以下の工事は実務経験と認められないため注意が必要です。
1 | 電気工事士法の定義で電気工事から除かれている「軽微な工事」 |
2 | 電気工事士法で別の資格が必要とされている「特殊電気工事」(最大電力500kW未満の需要設備のネオン工事及び非常用予備発電装置工事) |
3 | 5万V以上で使用する架空電線路の工事 |
4 | 保安通信設備の工事 |
第一種電気工事士試験の合格率
第一種電気工事士試験の受験者にとって気になる合格率を見てみましょう。一般財団法人電気技術者試験センターの公表によると、筆記試験が5割台、実技試験が6割台の合格率で推移しています。試験の難易度から見て、中程度といえるでしょう。筆記試験に関しては、50問中6割程度の正答が合格ラインです。設問数でいうと50問中30問の正答が必要になります。
まずは1次試験である筆記試験の合格が最初のステップとなりますので、過去問題や用語などを中心に復習することや、値を求めるための計算問題を確実に解けるように見直していくことが大切です。
なお、令和元年度~令和4年度における、第一種電気工事士試験の受験者数、合格者数、合格率は次のとおりです。
年度 | 筆記試験 | 技能試験 | ||||
受験者 | 合格者 | 合格率 | 受験者 | 合格者 | 合格率 | |
令和元年度 | 37,610 | 20,350 | 54.1% | 23,816 | 15,410 | 64.7% |
令和2年度 | 30,520 | 15,876 | 52.0% | 21,162 | 13,558 | 64.0% |
令和3年度 | 40,244 | 21,542 | 53.5% | 25,751 | 17,260 | 67.0% |
令和4年度 | 37,247 | 21,686 | 58.2% | 26,578 | 16,672 | 62.7% |
第一種電気工事士になるための勉強時間
「第一種電気工事士になるには、どのくらい勉強時間を確保すればよい?」といった質問が寄せられることがありますが、理解度には個人差があるため、一概に合格のための勉強時間を提示することはできません。
あえて目安を設けるのであれば、1年間の準備期間に対し、一日に30分から1時間程度勉強するとよいでしょう。自学が難しい場合は、通信講座などを利用して勉強していくことも一案です。
第一種電気工事士試験の筆記試験は、「30問の正答で合格」「計算問題や基本的な知識も出題される」「出題範囲はあらかじめ決められている」「マークシートによる四肢択一問題である」といった点です。二次試験で出題される配線を完成させる問題は、基本的な内容のものが多く、60分の制限時間内で十分に仕上げられます。まずは基本を忠実にまとめていくことを念頭に置いて準備を進めていきましょう。
さらに詳しく!
第一種電気工事士の試験は難しい?難易度や試験概要を解説
【筆記・技能】第一種電気工事士試験の受験対策
最後に、第一種電気工事士試験の筆記試験、技能試験の受験対策について解説します。
第一種電気工事士の筆記試験対策
筆記試験は暗記系の科目が中心で、計算問題が一部出題されます。
暗記系は一夜漬けではなく、継続してコツコツと覚えていくのがポイントです。記憶は時間が経つと薄れるため、忘れた頃にくり返し復習するようにしましょう。
計算問題は公式を覚えることに加え、分数、オームの法則、合成抵抗を覚えれば応用が可能です。有効電力、無効電力、皮相電力が関係するベクトル図を書いた場合、比率が3:4:5になる問題がよく出題されます。比率の関係を活用すると、電気の基礎に関する問題も比較的簡単に解けるようになるでしょう。
また、配線図は図記号が多いため、過去問をくり返し解くことが合格への近道です。
筆記試験の合格基準は60点以上ということもあり、なかには計算問題を捨ててしまう人もいます。しかし、数学ができなくても解ける問題はあるため、余裕をもって合格できるように計算問題も勉強すべきでしょう。
第一種電気工事士の技能試験対策
先に述べたように、技能試験は事前に公表される候補問題のなかから出題されます。配線間違いなど欠陥が1つでもあると不合格になるため、制限時間内に施工ミスなく完成させる必要があります。公表される候補問題をすべて練習し、どの問題が出ても対応できるようにしておきましょう。
筆記試験、技能試験どちらの対策をする場合にも、SATの通信講座を活用することをおすすめします。SATの通信講座は要点を押さえた内容のテキスト、解説動画で勉強ができる教材です。技能試験を攻略するには手順を覚える必要がありますが、解説動画で動きを見ながら手順を学べるため、内容を理解しやすいでしょう。
さらに、SATは電気工事士試験対策用の材料を提供する企業と提携しており、低価格・高品質の材料を購入できます。本番さながらの練習が可能で、技能試験に合格できる可能性も大いに高まるでしょう。
第一種電気工事士は筆記、技能で受験対策が大きく異なる
本記事では、第一種電気工事士の試験内容を中心に、試験の概要や合格率、合格するための勉強時間の目安などを解説しました。試験の難易度は中程度であるため、基本的な内容を押さえてコツコツと勉強を続ければ、合格も夢ではありません。1年後の試験を目指す場合には、一日30分から1時間程度、コンスタントに勉強を進めていくことをおすすめします。
第一種電気工事士の試験は筆記試験と技能試験で試験内容が大きく異なるため、試験ごとに対策しなければなりません。第一種電気工事士の試験に合格するため、効率的な勉強で最短の合格を目指せる、SATの通信講座をぜひご活用ください。