第三種電気主任技術者

実務経験がなくても第三種電気主任技術者になれる?

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電験三種は、電気主任技術者になるために必要な資格の1つです。取得はたいへん困難ですが、あこがれを感じている方も多いでしょう。

資格を取得するには試験合格と認定取得の2つの方法があり、双方で実務経験の扱いが大きく異なります。加えて職場で実力を発揮するには、一定の実務経験が必要です。

本記事では実務経験がなくても電気主任技術者になれるのか、また、どんなケースで実務経験が必要なのかについて解説します。

電験三種の認定取得と実務経験

電験三種を認定取得する場合は、学歴に加えて実務経験を要します。ここでは認定取得が可能となる条件について、詳しく解説します。

試験の合格者は、実務経験なしで資格を取れる

電験三種の取得方法は、以下の2種類に分けられます。

・試験(第三種電気主任技術者試験)に合格する
・学歴および実務経験の条件を満たしたうえで認定取得する

このうち試験を選んだ方は、実務経験が不要です。合格者は電気技術者試験センターへ申請することで、電験三種の有資格者になれます。

認定取得に必要な学歴

一方で認定取得する場合は、学歴および実務経験が必要です。学歴では大学や短大、高専や高校などの経済産業省が定めた認定校で、電気に関する以下の4分野を全て履修している必要があります。申請には卒業証明書と単位取得証明書が必要ですから、卒業した学校で早めに入手しましょう。

分野 履修すべき内容
理論 電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測に関するもの
電力 発電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。以下同じ。)の設計及び運用並びに電気材料に関するもの
機械 電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理に関するもの
法規 電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理に関するもの

引用:「中部近畿産業保安監督部北陸産業保安監督署「電気主任技術者免状の交付申請に必要な書類の作り方」

電力・機械・法規のうち、1~2分野で履修した科目や単位の不足がある場合は、その分野だけ「第三種電気主任技術者試験」に合格すれば学歴の条件を満たします。ただし、電力と機械の両方とも不足する方は、認定取得ができません。

実務経験には細かな定めがある

電験三種の認定取得において認められる実務経験は、以下のように細かく定められています。

・500V以上の発電設備、変電設備、送電設備、配電設備、給電・遠隔制御などの設備、需要設備に関する、工事や維持、運用の経験
・上記の業務を監督指導する業務、工事計画の認可申請書などの作成、電気事故防止対策業務など
出典:「中部近畿産業保安監督部北陸産業保安監督署「電気主任技術者免状の交付申請に必要な書類の作り方」

このため、実務経験に含まれない業務が多数あることに留意してください。一例として、以下の業務があげられます。

・電力会社などから直接100Vや200Vで受電する(一般用電気工作物)施設での仕事
・電気工作物に関する知識を要さない監視や記録
・受電設備を含まない需要設備、負荷設備のみの維持、運用業務
・実験設備や試験設備における業務
・二次側にだけ高電圧を発生させる機械器具に係る業務(例:ネオン変圧器など)
・船舶、車両、航空機内の電気設備に関する業務

出典:「中部近畿産業保安監督部北陸産業保安監督署「電気主任技術者免状の交付申請に必要な書類の作り方」

したがって申請の際には、以下の記載が必要です。

・担当した業務の項目を羅列せず、「いつ」「どこで」「何を」「どのように」実施したか、業務や工事ごとにもれなく記載する
・担当した電気工作物の内容を記載する

審査は細部まで入念に行われますから、詳しい記入が欠かせません。

実務経験の最低年数は学歴によって異なる

ここまで解説したとおり、電験三種の認定取得には学歴と実務経験の両方が必要です。実務経験の年数は、学歴により異なります。

学歴 実務経験の最低年数
大学 1年
短大や高専 2年
高校 3年

なお実務経験の年数を計算する際、各学校を卒業する前の年数は半分として計上します。

実務経験がなくても電気主任技術者になれるのか?

電験三種に合格していることは、電気主任技術者を選任する条件の1つです。そのため電験三種の合格者ならば、実務経験がなくても手続き上は電気主任技術者になれます。

一方で、実際はどうか気になるところです。この点について説明します。

まずは電気工事や設備管理の仕事で経験を積むことが近道

いま第一線で活躍している電気主任技術者も、はじめはみな初心者だったわけです。夢を実現するなら、まずは電気に関する実務経験を積むことが近道です。これは「未経験で電験三種に合格した」方も例外ではありません。

このため電気工事や設備管理の仕事に就き、十分な経験を積むとよいでしょう。その後に電気主任技術者を目指すと、資格と実力を兼ね備えた人材として採用される可能性が上がります。

20代や30代の場合は、即戦力でなくても採用される可能性がある

20代や30代の方は、業界での経験が浅い方も多いでしょう。そもそも実務経験自体がない方もいると思います。しかし若手は経験が少なくても将来性を買われやすいため、自社で鍛え上げる人材として採用する企業も多いでしょう。このため「未経験者応募歓迎」など、即戦力でなくても採用される可能性はあります。

もちろん電気工事や設備管理の経験があれば、より有利に就職活動を進められるでしょう。

40代以上の場合は、電気工事や設備管理の経験が重要

40代以上の方は、実務経験が重要視されます。このため、電気工事や設備管理の経験があると選択肢が広がります。もしまったくの未経験者の場合は、まず電気の実務経験を積むことから始めましょう。

そもそも電気は、取り扱いを誤ると大事故につながりかねません。この年代では即戦力が必要ですから、「経験のない者には任せられない」となっても仕方ないといえるでしょう。

一方で実務経験が豊富なら、60代以上の方でも働ける職場はあります。企業によっては、月に数回の巡視点検がメインの職務を任される場合もあります。

電気主任技術者の実務経験が積める職場

ここまで解説したとおり、電気主任技術者になるためには実務経験が重要です。ここではどのような職場であれば実務経験が積めるのか、また電験三種の認定取得に結びつけられるのかについて解説します。

高圧や特別高圧で受電している施設を選ぶ

電気主任技術者の経験を積むためには、6,000V以上で受電する「高圧受変電設備」や、60,000V以上で受電する「特別高圧受変電設備」で働くことがおすすめです。一例として、以下の施設が挙げられます。

・工場
・ショッピングセンターやアウトレットモールなどの商業施設
・オフィスビルや、オフィスビルを主体とした施設
・複合施設
・病院
・ホテル

これらの施設では「キュービクル」と呼ばれる箱型の設備が備え付けられていることがほとんどです。また電気主任技術者の選任が義務付けられている施設ですから、どのような職務を果たすべきか間近で学べます。

逆に一般用電気工作物での経験は、実務経験として扱われません。そのため小規模な施設や一般家庭など、100Vや200Vを使う施設での経験はカウントされないことに注意してください。

電気に関する専門的な仕事ができることを確認する

せっかく電気主任技術者になれる施設で働き始めても、実務経験を積めない場合があります。たとえば単なる点検や備品の修繕といった業務は、実務経験になりません。また「新たな電気主任技術者の養成は必要ない」と考える施設では、実務経験を積める仕事を任されない可能性もあります。

このため応募の際には、事前に実務経験を積めるかどうか確認することが重要です。企業の内情を知るためには、転職エージェントの活用もよい方法といえるでしょう。

まとめ

電験三種を認定取得するなら、実務経験は欠かせません。一方で試験合格の場合は、実務経験を問われずに電気主任技術者になれる可能性があります。

しかし、電気主任技術者は施設における電気の責任者という点を忘れてはなりません。そのため、未経験で資格だけ持つ方に電気主任技術者を任せる企業は少ないでしょう。

したがって、未経験者ならばまずは電気に関する実務経験を積むことが近道です。ただし20代や30代の場合は、未経験から電気主任技術者を育成する企業への就職も選択肢となります。それぞれの企業の募集要項を、事前によく調べておくことをおすすめします。

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