空調などの配管工事の国家資格である管工事施工管理技士は、1級と2級に区分されています。
1級のレベルが高いことはおおよそ理解できますが、具体的にどのような違いがあるのか、ご存じない方も多いのではないでしょうか?
こちらでは、管工事施工管理技士の1級・2級の受験資格をはじめ、業務領域、試験問題などの違いについて解説します。
目次
【管工事施工管理技士】1級と2級の受験資格と業務領域の違い
管工事施工管理技士の1級・2級の受験資格と、業務領域について見ていきましょう。
特に受験資格については令和6年度の試験より大幅に変更になりましたので、新旧2つの受験資格を紹介いたします。
受験資格の違い
管工事施工管理技士の試験を受けるためには、受験資格を満たす必要があります。まずは令和6年度の試験から変更になった新しい受験資格について確認しましょう。
1級の受験資格【新受験資格】
<第一次検定>
令和6年度以前までは、1級第一次検定の受験時に実務経験が必要でした。しかし令和6年度以降の試験では、受験年度末時点での年齢が19歳以上であれば実務経験の必要がなくなりました。
つまり年齢制限のみの受験資格となります。そのため、大幅に受験がしやすくなったといえるでしょう。
<第二次検定>
1級の第二次検定では第一次検定と違い実務経験が必要です。ただし制度変更前と必要な経験年数が違います。下記をご覧ください。
受検資格要件 | 実務経験年数 |
---|---|
1級第一次検定合格者 (令和3年度以降の試験) |
第一次検定合格後、 5年以上の実務経験年数 |
第一次検定合格後、 特定実務経験1年以上を含む3年以上の実務経験年数 |
|
第一次検定合格後、 監理技術者補佐としての1年以上の実務経験年数 |
|
2級第二次検定(旧実地試験含む)に合格した後、 1級第一次検定に合格した者 (1級第一次検定受検予定者を含む) |
2級第二次検定合格後、 5年以上の実務経験年数 |
2級第二次検定合格後、 特定実務経験1年以上を含む3年以上の実務経験年数 |
新しくなった1級第二次検定の受験資格の特徴として、1級一次または2級二次検定合格後からの実務経験年数が問われるようになりました。後ほど詳細は解説しますが、旧受験資格では学歴によって必要年数が細かく分かれていたため、よりシンプルになったと言えるでしょう。
なお表中にある特定実務経験とは、通常の実務経験の要件に加えて、建設業法の適用を受ける請負金額 4,500 万円(建築一式工事は 7,000 万円)以上の建設工事において、監理技術者または主任技術者(当該業種の監理技術者資格者証を有する者に限る)の指導の下又は自ら監理技術者若しくは主任技術者として施工管理を行った経験をいいます。
また監理技術者補佐の実務経験とは、対象業種の主任技術者資格を有する者が、1 級第一次検定に合格後、特例監理技術者(2つの現場を兼務している監理技術者)のもとで1つの現場に専任配置された工事に関するものに限ります。単なる監理技術者の補助等は認められません。
1級の受験資格【旧受験資格】
新しい受験資格での試験が実施されるようになりましたが、制度移行期間として令和10年度までの試験では旧受験資格でも受験が可能です。
そのため、ここからは旧受験資格についてみていきましょう。
1級の第一次検定・第二次検定を受験する場合、1年以上の指導監督的業務を含め、以下の実務経験年数が必要です。
学歴 | 実務経験年数 | |
---|---|---|
指定学科卒業 | 指定学科以外卒業 | |
大学、専門学校(高度専門士) | 3年以上 | 4年6ヶ月以上 |
短大、高等専門学校、専門学校(専門士) | 5年以上 | 7年6ヶ月以上 |
高校、中学、専門学校 (「高度専門士」「専門士」を除く) |
10年以上 | 11年6ヶ月以上 |
その他 | 15年以上 |
また、2級管工事施工管理技士の合格者は、以下の条件を満たすと受験可能です。(1年以上の指導監督的実務経験を含む)
区分 | 学歴 | 実務経験年数 | |
---|---|---|---|
指定学科卒業 | 指定学科以外卒業 | ||
2級合格後の実務経験 | – | 5年以上 | |
合格後5年未満の者 | 高校、中学、専門学校 (「高度専門士」「専門士」を除く) |
9年以上 | 10年6ヶ月以上 |
その他 | 12年以上 |
このように、2級合格後に5年以上の実務経験があれば、1級の受験資格が得られます。
実務経験年数が優遇される大学や短大の学歴がない場合、2級を取得する方法が最短ルートといえるでしょう。
また、受験資格と実地試験年数は細分化されており、管工事の選任の主任技術者経験、監理技術者の指導を受けた実務経験年数など、条件が異なるので確認が必要です。
また、指定学科とは、土木、都市工学、電気工学、機械工学など、建築学に関連する学科を指します。そして、高度専門士と専門士は、所定の要件を満たしたと文部科学大臣が認める専門課程を修了した称号です。
新制度旧制度ともに、詳細は全国建設研修センターの1級管工事施工管理技士試験のページをご覧ください。
2級の受験資格【新受験資格】
<第一次検定>
2級の第一次検定だけを受験する場合の受験資格は、「満17歳以上」であることです。
つまり1級では満19歳以上、2級では満17歳以上となります。
<第二次検定>
第二次検定では実務経験が必要です。1級同様に、新制度では試験合格後の年数が問われます。さらに2級では1級第一次の合格後であれば1年以上の実務経験を積めば2級第二次検定に受験可能です。
受検資格要件 | 実務経験年数 |
---|---|
1級第一次検定合格者 (令和3年度以降) |
合格後、1年以上の実務経験年数 |
2級第一次検定合格者 (令和3年度以降) |
合格後、3年以上の実務経験年数 |
2級の受験資格【旧受験資格】
<第一次検定>
旧資格でも2級第一次検定の受験資格は満17歳以上となります。つまり新受験資格でも変更なしとなります。ただし、第二次検定では新制度による変更があります。
<第二次検定>
2級第一次検定の合格者で下記年数以上の実務経験があれば、2級第二次検定の受験が可能です。
学歴 | 実務経験年数 | |
---|---|---|
指定学科卒業 | 指定学科以外卒業 | |
大学、専門学校(高度専門士) | 1年以上 | 1年6ヶ月以上 |
短大、高等専門学校、専門学校(専門士) | 2年以上 | 3年以上 |
高校、中学、専門学校(「高度専門士」「専門士」を除く) | 3年以上 | 4年6ヶ月以上 |
その他 | 8年以上 | |
技能検定合格者 | 4年以上 |
業務領域の違い
続いては1級と2級の業務領域の違いについてみていきましょう。
業務領域とは、業務上で務めることができる役割です。
施工管理士は、1級では大規模な建設工事にあたる特定建設業、それ以外の一般建設業において、専任技術者・主任技術者・監理技術者として認められます。
2級では一般建設業の専任技術者・主任技術者を務めることが可能です。
工事を請け負うためには、営業所に専任技術者、工事現場ごとに主任技術者を配置する必要があります。監理技術者は特定建設業者が請け負う大規模工事に配置が必要で、1級のみが務めることができる役割です。
1級は全ての役割を務められますが、2級では専任技術者と主任技術者に留まるのが大きな違いといえます。
経営事項審査の違い
経営事項審査とは、国や自治体の公共工事を請け負う際に必要な審査のことです。
施工管理技士の人数で点数がつけられるのが特徴で、1級は5点、2級は2点、監理技術者講習受講者は1点追加といった仕組みです。
1級の施工管理技士は点数が高いため、企業側にとって1級の有資格者が多ければ多いほどメリットがあります。
【管工事施工管理技士】1級と2級の試験問題の違い
管工事施工管理技士の試験は、1級・2級ともに第一次検定と第二次検定が課されます。そこで、1級と2級の試験問題の具体的な違いを確認しましょう。
第一次検定の違い
第一次検定はマークシートの4肢択一式で出題されます。1級では全73問中60問、2級では52問中40問を選択して解答します。1級も2級ともに、選択した問題の60%以上の正答で合格基準を満たします。
1級の出題科目は以下の6分野があり、必須科目と選択科目に分かれます。
項目 | 詳細 |
---|---|
必須 | 一般基礎…環境工学、液体工学、熱工学など |
必須 | 電気、建築…電気動力一般、建築一般 |
選択 | 発電所および変電所の設計および運転、送電線路および配電線路(屋内配線を含む。以下同じ。)の設計および運用ならびに電気材料に関するもの |
選択 | 空気設備、衛生設備…空気調和、上下水道、消防設備、浄化槽など |
必須 | 施工管理…施工計画、工程管理、品質管理、安全管理 |
選択 | 関連法規…建築基準法、労働基準法、水道法、消防法、労働安全衛生法など |
また、2級は問題数が少なくなるものの、出題科目は1級とほぼ同じです。
第二次検定の違い
第二次検定は第一次検定と異なり、全て記述式で解答します。出題科目は、施工要領図の判読、空気調和設備、給排水設備、労働安全衛生法、経験記述で、これらは1級と2級で共通です。
唯一の相違点は、工程管理が2級ではバーチャートの作成、1級ではネットワーク工程表であることです。
ただし、1級の出題傾向はより複雑になるため、難易度も高くなります。
例えば、空調設備と給排水設備では、2級に関しては留意点を4つ以上書けば点数がつきますが、1級では各種施工や試運転調整が絡むため、難易度が高くなるのです。
経験記述試験対策について
管工事施工管理技士の第二次検定には、1級2級共に「経験記述」という問題が例年必ず出題されます。
これは、過去に自分自身が経験した管工事に関する内容をひとつ選んで、その工事の概要や管理上で行なった事項について記述するという試験です。
経験記述試験はそれぞれが行なった工事が当然違うため、ひとりひとり解答内容が異なります。そのため試験対策が難しいと感じている人が多くいるです。
そこで、経験記述試験対策は通信講座がおすすめです。通信講座の場合、独学と違って経験記述講座の添削サービスがあります。添削するのは専門の講師が行うため、的確なアドバイスをもらうことができます。
管工事施工管理技士の試験を受けようと検討されている方は、通信講座で勉強をはじめてみてはいかがでしょうか。
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管工事施工管理技士 1級と2級の違いのまとめ
[sc_fs_multi_faq headline-0=”h3″ question-0=”管工事施工管理技士の1級と2級の受験資格の違いは?” answer-0=”管工事施工管理技士の1級と2級にはそれぞれ受験資格があります。
この受験資格は令和6年度の試験から変更になりました。特に1級第一次検定では年齢制限のみの受験資格となったため、以前より受験しやすくなったと言えます。
なお令和10年度の試験までは旧受験資格でも受験が可能です。” image-0=”” headline-1=”h3″ question-1=”管工事施工管理技士の1級と2級の業務の差は?” answer-1=”業務領域では1級は監理技術者になれるうえに、経営事項審査で5点加点されます。
一方、2級では専任技術者と主任技術者に限られます。1級の方が業務の範囲も当然広いため、現場では1級を所持している人材がより多く求められる傾向にあります。” image-1=”” count=”2″ html=”true” css_class=””]