インターネットやIP電話などの情報通信ネットワークは、今や生活に欠かせないものとなっています。
そのような状況のもと、光ファイバーなどのデジタル回線の接続工事に携われる資格「第一級デジタル通信」には、今後も高い需要が見込まれます。
しかし、第一級デジタル通信の資格で具体的に何ができるのか、どのような試験を受けるのかについて、詳しく知らない方も多いかもしれません。
ここでは、第一級デジタル通信の概要を踏まえ、試験科目と科目免除制度、受験の申請方法について解説します。
目次
第一級デジタル通信とはどのような資格?
第一級デジタル通信は、アナログ回線やデジタルデータ回線などの電気通信回線と端末設備との接続工事を行うために必要な国家資格です。
工事担任者が扱う電気通信回線には、アナログ電話回線の「アナログ通信」とデジタル回線の「デジタル通信」の区分があります。
デジタル通信とは、ブロードバンドやIP電話などのデジタルデータ伝送サービスを指します。
つまり、工事担任者のなかでもデジタル通信資格は、デジタル回線の電気通信設備工事で工事や監督ができる資格なのです。
デジタル通信の工事担任者資格には第一級と第二級の区分があり、第一級デジタル通信の保有者は、ISDNを除くすべてのデジタル回線への接続工事が可能です。
例えば、光ファイバーを用いた、高速かつ大容量の電気通信回線への接続工事などが対象業務に該当します。工事担任者の試験には受験資格はなく、年齢や学歴を問わず誰でも受験できます。
第一級デジタル通信の試験科目と科目免除
第一級デジタル通信の試験科目と、試験の仕組みについて紹介します。
第一級デジタル通信の試験科目
第一級デジタル通信の試験は、「基礎科目」「技術および理論科目」「法規科目」の3科目で構成されています。各科目で問われる内容は次のとおりです。
第一級デジタル通信の試験科目 | |
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科目 | 内容 |
基礎科目 (電気通信技術の基礎) |
電気工学(電気回路、電子回路、論理回路)の基礎 |
電気通信(伝送理論、伝送技術)の基礎 | |
技術および理論科目 (端末設備の接続のための技術および理論) |
端末設備の技術 |
ネットワークの技術 | |
情報セキュリティの技術 | |
接続工事の技術 | |
法規科目 (端末設備の接続に関する法規) |
電気通信事業法およびこれに基づく命令 |
有線電気通信法およびこれに基づく命令 | |
不正アクセス行為の禁止などに関する法律 | |
電子署名および認証業務に関する法律およびこれに基づく命令 |
出典:電気通信国家試験センター
また、各科目の試験は100点満点で、60点以上の得点で合格基準を満たします。
第一級デジタル通信の科目合格の仕組み
工事担任者の国家試験では、上記の3科目のうち、1つまたは2つで合格点を取ると「科目合格」となり、それ以降の受験において当該科目が免除になる制度があります。
科目合格の期限は、科目合格した試験の翌月初めから起算して3年以内に行われる最後の試験の申請受付最終日です。
第一級デジタル通信の科目免除
科目合格とは別に、資格や実務経験の条件を満たすと、第一級デジタル通信の科目が免除になる制度があります。資格による科目免除は次のとおりです。
免除可能な科目 | 保有する資格 |
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基礎科目 | アナログ第1種、アナログ第2種、デジタル第2種、AI第1種(第一級アナログ通信)、AI第2種、DD第2種 |
基礎科目および法規科目 | デジタル第1種、アナログ・デジタル総合種(総合通信) |
また、電気通信主任技術者資格や無線従事者資格を持つ方、認定学校修了または修了見込みの方についても、一定の科目が免除になる場合があります。
実務経験による科目免除では、第一級デジタル通信の範囲である端末設備などの接続工事の実務経験が必要です。
実務経験による科目免除 | |
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基礎科目の免除 |
端末設備などを接続するための工事に1年以上 |
端末設備などを接続するための工事に2年以上 | |
技術および理論科目の免除 | デジタル伝送路設備に端末設備などを接続するための工事に3年以上 |
これらの科目免除制度を組み合わせることにより、全科目免除にすることも可能です。
令和3年4月1日より適用される試験制度の変更について
以前まで第一級デジタル通信は、工事担任者DD種と呼ばれ、第一種から第三種までの資格区分がありましたが、令和3年4月1日より試験制度が変更されました。
第一種が第一級、第三種が第二級に改称されます。第二種はアナログ通信、デジタル通信ともに受験者数が少ないこともあり、廃止とのことです。
ただし、交付済みの工事担任者資格者証は引き続き有効で工事、監督の範囲に変更はありません。また試験科目に変更はなく、科目合格の有効期間(3年間)も引き続き有効です。
加えて、科目免除資格が追加されます。
電気通信主任技術者資格や無線従事者資格などを有している方だけでなく、電気通信工事施工管理技術検定(二級の第一次検定を除く)でも科目免除が可能とのことです。
必ず電気通信国家試験センターの情報を確認しておきましょう。
第一級デジタル通信を受験する方法
第一級デジタル通信の申請手続きと、受験手数料を見ていきましょう。
第一級デジタル通信資格試験の申請手続き
第一級デジタル通信の申請は、申請書の郵送申込、またはインターネット申込で行います。
郵送の場合、申請書を取り寄せて必要事項を記入し、郵便局の窓口で受験手数料を払い込み、申請書を郵送します。
インターネット申込の場合、ホームページ上で必要事項を入力するだけで申請でき、受験手数料の払込方法は、銀行での払込・郵便局での払込・コンビニでの払込の3通りから選択が可能です。
いずれの方法でも、受験票は試験日の2週間前までに発送されるため、万が一届かない場合は確認の連絡を入れましょう。
第一級デジタル通信の試験会場は、北海道から沖縄までの全国各地に計37地区が用意されており、試験は年に2回実施されます。
科目合格と科目免除の制度があることも考慮すると、工事担任者の試験は比較的受験しやすいといえるでしょう。
第一級デジタル通信試験の受験手数料
第一級デジタル通信の受験手数料は8,700円で、どれかの科目が免除される場合でも金額は変わりません。ただし、全科目免除を申請する場合のみ5,600円の受験手数料です。
また、インターネット申込の場合は申請後に受験手数料を支払うことになりますが、受付締切日までに払込が完了していないと受験が不可能になりますので注意しましょう。
第一級デジタル通信はすべてのデジタル回線の工事ができる
第一級デジタル通信はデジタル通信資格の最上位資格であり、ほぼすべてのデジタル回線における端末設備接続工事を行うことが可能です。
第一級デジタル通信の試験は3科目あり、それぞれ60点以上の得点で合格となります。一部の科目を合格した場合は科目合格となり、3年以内であれば次回以降の試験で科目免除になります。
また、資格や実務経験でも科目免除になる制度があるので、第一級デジタル通信を受験する際は詳細を確認しましょう。
申請にあたってはインターネット申込が手軽である反面、期日までに払込みが完了しないと受験できないので注意が必要です。
情報通信ネットワークには今後も高い需要が見込まれるため、工事担任者は将来性の高い資格だといえるでしょう。
電気通信事業の工事に携わる方は、第一級デジタル通信の取得を目指すことをおすすめします。