第三種冷凍機械責任者

冷凍機械責任者とは?仕事内容や3種類の違い、需要やキャリアを解説

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冷凍機械責任者とは、「ビルメン4点セットの1つ」とも呼ばれ、冷凍設備の保安業務を行う、ビルや産業を支える国家資格の1つです。資格には3種類あり、根強い需要が見込めるほか、管理者への昇格にも有利です。活躍の場には工場・インフラ向け分野や、メーカーといった幅広い将来の選択肢があります。仕事内容やキャリアについて解説します。

1 冷凍機械責任者とは?内容や責任

冷凍機械責任者は、高圧ガス製造保安責任者という国家資格の1つで、化学や液化天然ガス製造などさまざまな免状があるなかでも、特に冷凍設備に関わる機械・装置の保安業務を行う役割を持ちます。ここでは有資格者の仕事内容と、責任や役割を紹介します。

1-1 冷凍機械責任者の主な仕事内容

仕事内容は、その名の通り冷房用冷凍機などの機械設備の管理業務です。具体的な業務内容としては以下のものが挙げられます。

  • 機械の保守管理
  • 点検の立会・結果の保管
  • 無資格者の監督

冷凍機械とは、食品や素材を冷凍保存するための冷凍・冷蔵設備だけでなく、ビルや住居の空調設備なども含み、生活の幅広い場面を支えます。この冷凍機械には高圧ガスが利用されており、有資格者はビルや冷凍施設などで装置を安全に使うための保守点検や、業務に携わる無資格者の監督、メーカーとの調整など幅広い業務全般を担当します。

1-2 ビルメンだけでない幅広い仕事分野

冷凍機械責任者は、ビル管理業務、つまりビルメン(ビルメンテナンス)業務もあります。しかし、実際はそれだけに限定されません。

冷凍設備には幅広い用途があり、有資格者としての活躍の分野は多岐に渡ります。例えば、一般的に想像しやすいのはビルの空調施設や、食品工場、化学工場の冷凍・冷却装置です。また、身近なスーパーマーケットや日本に約6万店舗あるコンビニエンスストアの産業物流網を支えているのも冷凍設備です。

ほかにも、発電所船舶といったインフラ向けもあります。あるいは、航空関連宇宙開発向けといったさまざまな場所で、冷凍機械は必要不可欠なものとして重要な役割を担っているのです。

もちろん、専門知識がある有資格者であれば、設備に常駐する保安業務だけでなく、冷凍機械メーカーで製造や開発業務に携わるというキャリアも考えられます。例えば、3種類ある冷凍機械責任者資格のなかでも最も高度な第1種の保有者であれば、機械を製造する際の材料試験、耐圧試験・気密試験の検査員になる道もあるのです。

2-2 高圧ガス保安法の責任と業務の役割

冷凍機械の取扱い業務は、携わる全員が資格を保有している必要はありません。しかし、免状資格を保有している人物から管理者を選任し、都道府県知事に届け出ることが「高圧ガス保安法」という法律で義務付けられています(「設置義務」)。

また、適切かつスムーズに業務を行うためには高圧ガスに関する専門知識や法令への理解が必須です。冷凍機械責任者とは、正しい知識を持って業務を管理するための重要な役割と責任を持っています。

 

2 冷凍機械責任者資格は3種類

冷凍機械責任者の資格は、第1種から第3種までの3つです。第3種類が1番やさしく、第2種、第1種になるにつれて試験の難易度が上がっていき、取り扱える冷凍装置の規模も大きくなります。具体的に、どのような違いがあるのでしょうか。

2-1 資格3種類の内容と要件

高圧ガス製造保安責任者

(冷凍)の種類

管理が可能な製造施設

要件

第1種冷凍機械

1日の冷凍能力が300トン以上の製造施設

1日の冷凍能力が100トン以上の製造施設を使用している高圧ガスの製造に関する1年以上の実経験

第2種冷凍機械

1日の冷凍能力が300トン未満の製造施設

1日の冷凍能力が20トン以上の製造施設を使用している高圧ガスの製造に関する1年以上の実務経験

第3種冷凍機械

1日の冷凍能力が100トン未満の製造施設

1日の冷凍能力が3トン以上の製造施設を使用している高圧ガスの製造に関する1年以上の実務経験

表の通り、管理する設備の冷凍能力によって資格の種類が分かれています。一方で、冷媒ガスの種類の制限はありません。免状の内容も、冷凍能力を除けば冷凍空調機器を備えている施設、冷凍倉庫、冷凍冷蔵工場等などで、冷凍機械にかかわる保安業務や統括的な管理業務を行うという点では同じです。

試験の難易度と必要な知識の目安は、それぞれ下記のようになっています。

  • 第1種:大学の工学部を修了
  • 第2種:高等専門学校を修了
  • 第3種:工業高校を修了

どの試験でも、知識や実務経験がゼロの状態から受験することはできますが、実際に責任者として業務に当たるには、表の要件に挙げた実務経験を積んでいることが条件です。

2-2 上位免状の特徴とメリット

上位資格を目指すことのメリットは、活躍できるフィールドが広がる点でしょう。先述したように、冷凍設備には幅広い用途があります。特に、中型の装置を扱える第2種、規模に制限がない第1種免状を保有していれば多くの仕事に対応しやすい点が特徴です。

 

3 冷凍機械責任者になるには?試験・勉強方法

先述した通り、冷凍機械責任者は国家試験に合格することが必要で、実務経験などの要件が一切ありません。責任者として実務に当たり、自治体に届け出る時には規定の冷凍能力・規定の期間の経験が必要という決まりです。

試験は例年11月の1回のみで、試験科目は3つです(第3種には「学識」はありません)。

<試験科目>

・法令:1時間
・保安管理技術:1.5時間
・学識:2時間(第一種・第二種のみ)

第一種~第三種で多少合格率は異なりますが、普通に全科目受験をした場合の合格率は30~40%程度です。

平成30年度

全科目受験者

法令だけの受験者

第一種

34.3%

91.7%

第二種

33.0%

84.4%

第三種

39.8%

85.0%

 

特に、1種に必要な知識量の目安は工学部修了程度で、難易度は高く、勉強方法は書籍や動画教材等さまざまな選択肢から自分に合うやり方を考える必要があります。

例えば、高圧ガス保安協会が公式に講習を開催しており、これは試験対策として効果的な選択肢です。3日間21時間の講習受講後に行われる検定試験に合格すれば、本番の国家試験科目が一部免除され、法令だけの受験となり、合格率は80~90%と非常に高くなりますが、参加が難しい場合は、通信講座や、参考書や問題集を購入して独学する方法などを検討してみましょう。講習を受ける場合、資格取得までの流れは下記のとおりです。

①5日間の講習受講する

②講習の最後に行われる検定試験に受かり、本試験科目が一部免除される

③本試験(国家試験)で法令科目のみ受験し、合格する。

講習のメリット・デメリットについてはこちらの記事を御覧ください「冷凍機械責任者は受験方法で難易度が変わる!科目免除もできる講習受験とは?

 

4 冷凍機械責任者の需要とキャリアとは?

冷凍機械責任者に合格した後、どのような需要があり、キャリアの選択肢としてはどんな種類があるのでしょうか。根強い需要がある理由や、代表的なパターンを紹介します。

4-1 有資格者への根強い需要

冷凍機械責任者の有資格者には、企業からの根強いニーズがあることはたしかです。先述の通り、冷凍機械を設置している事業者は責任者を選任して都道府県知事に届け出ることが高圧ガス保安法で規定されています。その責任者は有資格者でなければなりません。また、冷凍機械はビル、住居から食品工場、航空インフラまで幅広く活用されており、今後も冷凍機械責任者に対して継続的な需要が見込まれるのです。

一例として第3種の全科目と一部免除受験者の合計数の推移を確認すると、2007年の受験者数は約9千人だったのが、徐々に右肩上がりを続け、2016年には1万1千人を超えています。資格が必要とされている証拠と考えることができるでしょう。

4-2 ビルメンからメーカーまで広い専門キャリア

冷凍機械の関連業務に携わる上で、有資格者は重宝されるだけでなく、専門職としてのキャリアアップにも役立ちます。

冷凍機械の保安業務に携わるだけであれば資格は不要ですが、責任者になるには資格が必須です。資格がなければそれだけで管理者になる選択肢が断たれてしまいます一方、資格を保有していれば、責任者として幅広い経験を積むことができ、現場でも専門知識が役立つでしょう。昇進や収入アップを狙うには、資格取得のメリットは決して少なくありません。

また、先述したように、冷凍機械はビルメンテナンス業務だけでなく、工場や物流、インフラなどさまざまな分野で使用されており、産業を支える重要な土台の1つです。第3種からさらに上位資格を取得すれば、より冷凍能力が大きな機械を扱えるようになり、活躍の場も広がります。専門知識や経験を生かしてメーカーでの製造開発者のキャリアもありえるでしょう。冷凍機械責任者とは、キャリアの選択肢が豊富だという特徴もあるのです。

 

5 まとめ

冷凍機械責任者とは、高圧ガス製造保安責任者という国家資格の1つで、冷凍設備に関わる設備・装置の保安業務を行う役割を持ちます。仕事の内容は、管理や保守点検業務が主で、ビルメンテナンスから工場、インフラ向けなど、幅広い分野で活躍します。

資格免状には第3種をはじめ3種類があり、最上位の第1種であれば扱える機械の規模に制限がありません。いずれも年1回のみで合格率40%ほどという楽な試験ではないため、講習や通信講座などを有効活用する必要があります。

冷凍機械責任者は、冷凍設備の保安事業者に必須の資格のため、今後も根強い需要が見込めます。また、管理者としてのキャリアアップにも有利です。そのほか、ビル・住居からメーカーまでさまざまなキャリアの選択肢も考えることができます。

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