「ウインチ」は、建設資材や車両、機械などの重量物を移動するための機械です。
また、ウインチと同様にワイヤーの巻き上げで重量物を移動できる機械には、「ホイスト」があります。
ウインチとホイストは一見すると似ていますが、用途や特別教育の面で明確な違いがあることをご存じでしょうか?
今回は、ウインチとホイストの基礎知識を踏まえ、用途と特別教育の違いについて解説します。
目次
ウインチ、ホイストとは?
まずは、ウインチとホイストの基礎知識について見ていきましょう。
ウインチ、ホイストはいずれもマテハン機器
ウインチとホイストは、いずれもマテハン機器に該当します。マテハンとはマテリアル・ハンドリングの略称で、ものを移動させる荷役機器のことです。
マテハン機器の種類は、ウインチ、ホイストに加え、フォークリフト、ベルトコンベアなど多岐にわたります。
なお、「マテハン機器」はおもに物流業務で使用される物流用語です。
ウインチの基礎知識
ウインチとは、ワイヤーを巻き上げて、ものを垂直方向に持ち上げたり、横に引っ張ったりする機械のことです。
ワイヤーをドラムに巻き付けることで、重量物も簡単に移動できます。 動力の種類により、手動式、電気式、エンジン式、油圧式、空圧式に分類され、建築資材や足場部材の荷揚げ、車両や機械の昇降、伐採樹木の引き上げなど、さまざまな用途で利用されます。
なお、ウインチの本体は、床や壁に固定して使用することが基本です。
ホイストの基礎知識
ホイストもウインチと同様に、ワイヤーの巻き上げによってものを持ち上げる機械です。
ホイストの動力もウインチと同様に、手動式、電動式、油圧式、空圧式などさまざまなタイプが存在します。
ホイストは、天井のアイビームに固定する電動横行電気ホイスト、足場などさまざまな場所で使用できるポータブルタイプに分類されます。
ウインチとホイストの違い
ウインチとホイストは両者とも「巻上げ機」と呼ばれ、混同しやすいので注意が必要です。
ウインチとホイストの明確な違いは、ウインチが荷物の上げ下ろし、横引きができる一方、ホイストは、上げ下ろしのみに限られる点です。
また、ウインチは床や壁に固定しますが、ホイストは梁などに吊り下げて使用します。 天井に固定する電動横行電気ホイストに関しては、本体そのものの横移動は可能ですが、ワイヤーによる横引きはできません。
なお、ホイストはクレーンと混同されることもあります。クレーンは「荷物を吊り上げ、かつ水平に運搬することを目的」とした機械です。
荷物の吊り上げ、吊り下げしかできないホイストは、クレーンにおける昇降機構の一種といえます。
ウインチ、ホイストの取り扱いに特別教育は必要?
ウインチの作業には負傷や死亡事故などの危険がともなうため、ウインチを使用する業務に携わるには、「巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育」を受講しなければなりません。
労働安全衛生法で定められた危険・有害な業務に従事するには、安全または衛生のための教育を受ける必要があり、ウインチを用いた業務はこれに該当します。
なお、ウインチのサイズ、動力の大小、吊り上げられる荷重の重さに関わらず、以下の内容の「巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育」を実施する必要があります。
巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育の受講内容 | ||
---|---|---|
科目 | 内容 | 時間 |
学科 | 巻上げ機に関する知識 | 3時間 |
巻上げ機の運転に必要な一般的事項に関する知識 | 2時間 | |
関係法令 | 1時間 | |
学科合計 | 最低6時間以上 | |
実技 | 巻上げ機の運転 | 3時間 |
荷掛け及び合図 | 1時間 | |
実技合計 | 最低4時間以上 |
一方、ホイストを操作するにあたっては、「巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育」の受講は必要ありません。
電気ホイスト、エアーホイストなどは、特別教育が必要な巻上げ機に該当しないからです。
ただし、「ホイスト式天井クレーン」の場合、荷重により「クレーン運転の業務に係る特別教育」
の受講が必要になるので注意してください。
ウインチとホイストの違いを理解し、必要な知識を身に付けましょう
ここまで、ウインチとホイストの違いや、特別教育について解説してきました。
ウインチとホイストは、いずれもワイヤーなどを巻き上げて荷物を移動できる機械です。ただし、ウインチは吊り上げ、吊り下げ、けん引、横引きとさまざまな方向にものを移動させられることができますが、ホイストの機能は荷物の上げ下げに限定されます。
ウインチの操作は、労働安全衛生法で定められた危険または有害な業務に該当するため、「巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育の受講」が必要です。
なお、ホイストのみを扱う場合には、特別教育の受講は不要です。 ウインチとホイストは似ているようで全く違う機械であるため、両者を混同しないよう注意しましょう。
「巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育」は、講習会に参加するほかに、通信講座でも受講が可能です。
SATの通信講座では、解説動画と専用のテキストで勉強できるため、より理解度が深まります。
講習会に参加する時間がない、講習会会場が遠方で受講しづらい、といった方は、SATの巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育講座をぜひご利用ください。