第三種電気主任技術者

電験三種の難易度や合格率は?合格のポイントも解説

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第三種電気主任技術者(電験三種)とは、大型建物の電気設備(電圧5万ボルト未満の事業用工作物)の保安監督業務を行うための資格です。

このような電気設備は多くのオフィスビルや大型商業施設、ホテルなどに設置されており、多くの人の生活や安全を保っています。
そのため、電験三種の資格が必要な電気設備の保安監督業務には相応の専門知識が求められます。

電験三種試験の合格率は10%未満でとても難易度が高く、合格には、電気に関する基礎知識と現場での応用力、計算力が必要とされます。そこで今回は、電験三種試験の難易度や合格率、科目の出題傾向、勉強のポイントを解説します。

電験三種の資格の取得方法

最初に電験三種の資格を取得する方法から紹介します。以下のとおり、2種類あります。

(1)認定校を卒業後、実務経験を積んで申請する

(2)試験を受験して合格する

(1)は全国にある認定高校、短大、専門学校、大学で電気工学に関する科目を修了していることと、数年間の実務経験が必要とされています。資格試験なしで資格を取得できる反面、取得までに時間と費用がかかってしまうのが難点です。

(2)の資格試験受験においては受験の制限はありませんが、実務経験を積んでいるレベルの知識や応用力が問われる試験に合格しなければいけません。独学では1年以上かかることもあります。よって動画講座などを活用して、実務に即した学習を行うことをおすすめします。動画講座などが効率良いでしょう。

電験三種試験の難易度とは?

電験三種試験は、必ずしも予備校などに通わなくても参考書や問題集を使えば独学で合格可能なレベルです。ただし、独学でも合格できるからといって決して簡単ではなく、勉強の仕方によっては4ヶ月~1年ほどを費やす必要があります。

電験三種試験の難易度を説明するために、電験三種試験と内容が近い、電気工事士試験やエネルギー管理士試験と難易度を比較します。

電気工事士試験と比較した難易度は?

電気工事士は工場やビルなどで電気設備に関する工事に従事できるもので、第一種と第二種のうち上位の第1種は最大電力500キロワット未満の工場やビルなどでの工事が対象です。

電気工事士はあくまでも工事従事者、つまりプレイヤーとしての資格ですが、電験三種は「電気主任技術者」という正式名称からもわかるように、管理者としての知見が求められるため難易度が高く設定されています。

電気工事士は工場やビルなどの電気設備工事に従事するための資格です。第一種と第二種に分かれており、上位の第一種は最大電力500キロワット未満の電気設備の工事を担当できます。

電験三種と比較した場合、電験三種は保安監督業務者ですが、電気工事士は指示の元に動く工事士です。そのため電気工事士のほうが難易度は低く、第一種電気工事士の合格率は30%前後で推移しています。

電験三種の合格率が10%以下であることを考えると、電験三種の難易度の高さがお分かり頂けると思います。

電験三種の合格率は?

電験三種の合格率は平成20年度以降、10%未満です。とても難易度が高い試験だといえます。

合格率は10%弱で推移

試験実施機関である電気技術者試験センターの発表によると、平成20年からの試験合格率は下記のようになっています。

年度

受験申込者(人)

受験者(人)

合格者(人)

合格率

平成20年度

54,509

40,140

4,361

10.9%

平成21年度

64,259

47,593

4,558

9.6%

平成22年度

68,471

50,794

3,639

7.2%

平成23年度

67,844

48,864

2,674

5.5%

平成24年度

68,484

49,452

2,895

5.9%

平成25年度

69,128

49,575

4,311

8.7%

平成26年度

68,756

48,681

4,102

8.4%

平成27年度

63,694

45,311

3,502

7.7%

平成28年度

66,896

46,552

3,980

8.5%

平成29年度

64,974

45,720

3,698

8.1%

平成30年度

61,941

42,976

3,918

9.1%

令和元年

59,234

41,543

3,879

9.3%

引用元:電気技術者試験センター

表からもわかるように、この期間で合格率が10%を上回ったのは1度だけで、その他は5〜9%台で推移しています。例えば、エネルギー管理士は受験者数1万人程度に対して合格率20%台、同じく難関といわれる宅建は受験者数20万人台に対して合格率15%程度です。他の試験と比べても、10%弱の合格率は非常に低い水準であることが分かります。

表からもわかるように、平成20年度に合格率10.9%と合格率が10%を上回って以降、合格率は一桁台をキープしています。最も低い年は平成23年度の5.5%で、直近の平成29年度、30年度はそれぞれ8.1%、9.1%と合格率は10%に届いていません。

電験三種・科目ごとの合格率

電験三種試験には、4つの科目があります。平成26年以降について、それぞれの合格率は下のとおりです。

年度

科目

申込者(人)

受験者(人)

合格者(人)

合格率

平成26年度

理 論

61,635

39,977

6,948

17.4%

電 力

60,929

37,953

8,045

21.2%

機 械

63,465

37,424

6,086

16.3%

法 規

63,143

38,753

6,763

17.5%

平成27年度

理 論

56,790

37,007

6,707

18.1%

電 力

56,342

35,260

6,873

19.5%

機 械

57,963

34,126

3,653

10.7%

法 規

57,256

35,047

7,006

20.0%

平成28年度

理 論

59,207

37,622

6,956

18.5%

電 力

58,278

35,352

4,381

12.4%

機 械

62,835

36,612

8,898

24.3%

法 規

59,641

35,198

4,985

14.2%

平成29年度

理 論

57,065

36,608

7,085

19.4%

電 力

59,128

36,721

4,987

13.6%

機 械

58,018

32,850

5,354

16.3%

法 規

59,443

35,825

5,798

16.2%

平成30年度

理 論

53,735

33,749

4,998

14.8%

電 力

57,338

35,351

8,876

25.1%

機 械

54,992

30,656

5,991

19.5%

法 規

56,901

33,594

4,495

13.4%

令和元年

理 論

52,765

33,939

6,239

18.4%

電 力

51,501

30,920

5,646

18.3%

機 械

53,217

29,975

7,989

26.7%

法 規

55,495

33,079

5,858

17.7%

引用元:電気技術者試験センター

いずれの科目も約10〜20%になっています。毎年、全体の合格率は10%弱ですが、科目単体で見ると20%を超えることもあるのが現実です。科目合格の実績は翌々年まで持ち越せるため、2年間または3年間で4科目全てに合格し、試験合格するルートもあります。

電験三種の合格率が低い背景

電験三種の合格率が低い理由の背景には、試験が難しいということの他にも、誰でも受験できることがあげられます。

電験三種は受験制限がなく、需要が高いため受験者数が多い

電験三種は受験制限が無く、前提となる学歴や実務経験を必要としません。そのため合格の実力に満たない受験者も腕試しなどで受験するために合格率が低くなっていることが考えられます。

受験に制限がある例として、社会保険労務士試験は一部例外を除いて大学卒などの学歴や、3年以上の実務経験が必要です。

また多くの企業が電験三種保持者を求めているので、電験三種保持者の需要は高く、就職・転職に有利であるとして受験生にも人気のため、受験者数が多い理由といえます。

電気関係の実務的知識が問われる

電験三種の試験は実務に即した知識が問われる試験です。そのため参考書や問題集で独学しても合格はなかなか難しいのが実状です。

電験三種試験の難易度の高さを考えると、実務経験の有無にかかわらず、合格にはしっかりとした教材を使うことをおすすめします。

応用力がつく勉強法が必須

電験三種に合格しなかった人にはある共通点があります。それは、基礎知識を中心に学習し、応用力がつくような勉強をしなかったことです。

電験三種の試験は、過去とまったく同じ問題や、似た問題が出題されることは極めて少ないので、応用力が求められます。

そのため、基礎知識は当然のこと、その知識を活かした応用問題が解けるような勉強をしましょう。意味も分からず過去問題をただ丸暗記する学習法は効果的ではありません。なぜなら、公式を覚えても解き方がわからないなど、独学ではどうしても限界があります。特にテキストの解説だけでは十分に理解できない方は通信講座を利用し、弱点を教えてもらい、苦手な問題を克服するのがよいでしょう。

電験三種試験の合格に必要なこと

電験三種試験の合格に必要なことを科目ごとに見ていきましょう。

試験4科目ごとの応用力

試験は理論、電力、機械、法規の4科目で、内容は下のとおりです。

科目名

科目の内容

理 論

電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測

電 力

発電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。)の設計及び運用並びに電気材料

機 械

電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理

法 規

電気法規(保安に関するものに限る。)及び電気施設管理

引用元:電気技術者試験センター

この電験三種試験の特徴として、「理論」で問われる電気に関する基礎知識を土台にして、他の科目でケースごとに応用していく力が必要です。

「電力」では電気回路、「機械」は変圧器・直流機などに関する内容ですが、いずれも「理論」の知識を応用したものです。「法規」は法令文の暗記と計算力が問われますが、電気の知識を理解し、使えるレベルにすることが求められます。

数学の理解と計算力

電験三種試験に出題される問題は、公式を理解しておけば比較的解きやすい傾向にあります。ただし、発電所の電力の問題など、電験三種特有の数学や公式が頻出するため、対策を立てておくことは必要です。

試験の出題文と問題比率は固定されているため、過去問題や演習問題で計算問題などをしっかり解けるようにしておけば安心です。

計画的で効率の良い対策

電験三種は科目合格制で、2年間で4科目に合格すればよく、合格のためには勉強時間などの配分に留意して対策を立てておきたいところです。

「理論」は電気に関する基礎的な内容が問われ、「電力」と「機械」では応用的な問題が出題されます。よって「理論」で基礎を固めてから、「電力」と「機械」に取り組む方が多いでしょう。また「法令」は法令の暗記が必要となるので、じっくり取り組んでください。

電験三種の数学は、中学までの数学で解答できると言われることもありますが、覚える公式が多いうえに、どのように計算すればわからないというのが問題です。また、計算に時間がかかり、時間切れになってしまう方も多いため、勉強法も工夫が必要です。

例えば、公式を覚える際は、公式のアルファベットや数字の意味を考えると効率よく覚えられます。例えばオームの法則であれば、Vが電圧で、Iが電流で、Rが抵抗、という感じで覚えましょう。

まとめ

電験三種試験は合格率が10%未満で難易度が高い試験です。試験では基礎知識や公式の暗記だけでなく、応用力や実務で必要な知識も問われます。独学で合格することもできますが、1年以上かかるケースもあるため、講座などを使って効率良く勉強することがおすすめです。

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