熱中症は職場が高温多湿の環境だと、誰でも発症する恐れがあります。
熱中症は発症してから時間がたつほど死亡する可能性が高まり、命は取り留めても深刻な後遺症が残る恐れもあります。また、熱中症が労働災害と認められれば、会社の信用も低下する恐れもあるでしょう。
本記事では、熱中症の危険性と職場での対策方法、予防方法を紹介します。
目次
熱中症とは
熱中症の原因、症状は以下のとおりです。
原因
高温多湿な環境で長時間すごすことで体温調節機能がうまく働かなる
症状
体内に熱が籠もり大量の発汗・頭痛・不快感・吐き気・意識障害などが起こる
熱中症は暑い季節に屋外で長時間過ごすことによって発症するといったイメージが強いですが、高温多湿の環境下ならば室内でも夜でも発症する可能性があります。
厚生労働省は定期的に熱中症による死者の数を発表しており、2022年6~9月には1387人もの方が熱中症で亡くなっています。
また、熱中症は脳などの中枢神経障害が後遺症として発症することがあり、頭痛、目眩、倦怠感などが数日~数ヵ月残る恐れもあるでしょう。
職場での熱中症とは
この項では、熱中症が発生しやすい職場や職場で熱中症が発生した場合のデメリットなどを紹介します。職場で熱中症が発生したらどのような危険性やデメリットが発生するのか、知りたい方は、参考にしてください。
熱中症が発生しやすい環境とは
熱中症は、高温多湿の環境ではどこでも発生する可能性があります。
熱中症発生の危険性を示す指標の1つに、暑さ指数(WBGT)があります。暑さ指数(WBGT)とは、熱中症を予防することを目的に1954年にアメリカで提案されました。
気温同様摂氏度(℃)で示されますが、湿度・日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境・気温の3つを取り入れた指標です。
日本生気象学会が発表した「日常生活における熱中症予防指針Ver.4」によると、暑さ指数の指針は以下の通りです。
25以下:強い生活活動で熱中症が起こる危険がある
25~28:運動などを行っていると熱中症を起こす可能性がある
28~31:普通の生活をしていても熱中症を起こす可能性がある
31以上:安静にしていても熱中症を興す可能性がある
したがって、仕事の内容によっては25以下でも熱中症に警戒する必要があります。
熱中症が発生しやすい職場とは?
熱中症が発生しやすい職場とは、以下のとおりです。
- 気温が高い屋外で行う仕事が多い職場
- 水分補給が小まめにできない職場
- 高温多湿の室内で仕事を行う職場
熱中症は、建築業・警備業など、屋外で作業を行うことが多い職種では早くから予防対策が取られてきました。
しかし、全ての職場に熱中症の危険が潜んでいます。例えば、空調が効いた室内で勤務するイメージがある小売業でも、バックヤードでは冷房が効いていない可能性があるでしょう。また、冷房のない倉庫で荷出し作業を長時間行った結果、体内に熱が籠もって熱中症を発生した事例もあります。
自分の職場は熱中症は無関係などとは思わないことが大切です。
職場で熱中症が起こった場合のリスク
職場で熱中症が発生すると、以下のようなリスクがあります。
- 労災が発生するリスク
- 職場の労働力が減少するリスク
- 仕事が滞るリスク
- 会社自体の評判が低下するリスク
従業員が熱中症にかかった場合、仕事が続けられません。長ければ1ヶ月程度職場を離脱する場合もあります。また、熱中症は1人だけが発生するとは限りません。
数人~数十人が一斉に熱中症を発生した場合、仕事全体が滞る可能性もあるでしょう。もし、納期が決まっている仕事がストップすれば、会社にとっても大打撃です。
また、熱中症が労災として認められればニュースにもなり、「労働環境を整えられなかった職場」として会社全体の評判が落ちる可能性もあります。
職場では熱中症が発生しな いよう従業員はもちろんのこと、従業員を管理する管理職も知識を持っておく必要があります。
職場で熱中症の発生を予防する方法
職場で熱中症の発生を予防する方法を知りたい方も多いでしょう。ここでは、職場で熱中症を発生させないために、職場全体でできる対策を紹介します。
環境の管理
職場での熱中症を防ぐには、職場環境の管理が重要です。一例を挙げると、暑さ指数(WBGT)の低減です。暑さ指数が上がるほど熱中症の危険性は高まります。
そのため、従業員はもちろんのこと、管理職が職場の環境を整えて熱中症が発生する危険性を下げることが大切です。
具体的な方法は、以下の通りです。
- WBGT指数計を用いて暑さ指数を把握しておく
- 水分の補給や休息ができるように休憩所を調える
- 水分補給が気軽にできる余裕を持ったスケジュールを作る
- 会社から熱中症を防ぐ作業着や水分などを支給する
熱中症対策として多くの職場で行われているのは、従業員に水分の補給を呼びかけるPR活動です。しかし、それだけでは不十分です。従業員が気軽に水分補給ができる環境を整えましょう。
女性が多い職場の場合は、女性用トイレの整備も重要です。 また、熱中症は熱帯夜でも発生します。熱中症の危険性を客観的に把握するためには、WBGT指数計を用いて暑さ指数を把握しておくことも有効です。
熱中症予防労働衛生教育を受けさせる
熱中症予防労働衛生教育とは、高温多湿な環境下で作業を行う労働者に対して熱中症の予防や、熱中症が発症した際の対応方法を教える教育です。
熱中症予防労働衛生教育 | |
---|---|
No. | カリキュラム |
1 | 熱中症の症状 |
2 | 熱中症の予防方法 |
3 | 緊急時の救急処置 |
4 | 熱中症の事例 |
教育は、作業者用と管理者用の2つがあり、作業者用の教育は2時間半、管理者用の教育は3時間半となっています。
熱中症予防労働衛生教育を受けさせるメリットは、以下のようなものが挙げられます。
- 熱中症の自覚症状が早めに分かる
- 熱中症の恐ろしさや予防対策の重要性が分かる
- 万が一熱中症が発生しても素早く対処ができるようになる
熱中症予防労働衛生教育は義務ではありません。しかし、教育者向けの教育でも半日あれば受けられます。ぜひ、受講しましょう。
熱中症予防労働衛生教育の受講方法
熱中症予防労働衛生教育の受講方法には、対面受講・出張受講・オンライン受講の3種類があります。それぞれのメリット・デメリットを簡単にまとめました。
メリット
対面講習:講習を実施している場所に行けば受講できる
出張講習:講師を呼べるので受講側に注ごうが良い日に受講できる
オンライン講習:ネットに繋がったパソコンやスマホがあればどこでも受講できる
デメリット
対面講習:受講できる日に限りがある
出張講習:講師の数が少なく実施できるところが限られている
オンライン講習:管理者が必要な場合がある。ネット環境が必須
SATのWeb講座を利用して熱中症予防労働衛生教育を受けよう
通信教育のSATでは、オンラインによる熱中症予防労働衛生教育講座を提供しています。
SATの講座の特徴は、オンラインで24時間いつでも好きな時に受講ができることです。専用のスタジオで収録された講義動画はポイントを押さえた内容となっており、PC・スマートフォン・タブレット端末から学習できます。
受講の状態は、端末のカメラを使った労働局確認済みのAI顔認証システムで受講が担保される仕組みです。監視者を別途用意しなくても受講が無効になることはありませんので、1人での受講が可能です。
また、受講完了後はスマホアプリで修了証が即日発行されるので、教育を受講したことを証明したい場合も安心です。もちろんプラスチックカードタイプの修了証も選択可能です。
熱中症はとても恐ろしく、職場において発生した際の対応策を十分に理解しておく必要があります。熱中症予防労働衛生教育を受講して、従業員・管理者両方ともに熱中症に対する知識を身につけておきましょう。