ここ数年、難化傾向が強い電験三種の法規ですが、細かく分析していけば効率よく得点に結びつく勉強法が見えてきます。
この記事では、電験三種で一番合格率の低い【法規】に的を絞って徹底分析し、合格するための勉強法を公開しています。是非、最後まで目を通してください。
目次
電験三種【法規】の合格基準点と合格率
電験三種の過去10年の合格基準点とポイント
電験三種(第三種電気主任技術者)の合格点は60点以上を取得すれば確実ではありますが、実際は科目間調整が入ります。試験後に第三種電気主任技術者試験委員会が各科目の合格基準点を決定し、試験結果と同時に公表されます。
2008年から10年間の科目別合格基準点を見てみましょう。
理論 | 電力 | 機械 | 法規 | |
2018(平成30)年 | 55 | 55 | 55 | 51 |
2017(平成29)年 | 55 | 55 | 55 | 55 |
2016(平成28)年 | 55 | 55 | 55 | 54 |
2015(平成27)年 | 55 | 55 | 55 | 55 |
2014(平成26)年 | 54.38 | 58 | 54.39 | 58 |
2013(平成25)年 | 57.73 | 56.32 | 54.57 | 58 |
2012(平成24)年 | 55 | 55 | 50.56 | 51.35 |
2011(平成23)年 | 52.44 | 55 | 55 | 54.2 |
2010(平成22)年 | 55 | 52.75 | 47.65 | 55 |
2009(平成21)年 | 53.9 | 55 | 49.17 | 55 |
2008(平成20)年 | 60 | 60 | 55 | 60 |
このように、2008年を最後に合格基準点が60点に達したことはありません。この結果から言えることは、まず全体として100点を目指す勉強ではなく60点を確実に取得できる勉強法が重要になるということです。
また、科目単位でいくと法規が明らかに難化していることが分かります。他の科目が易しいとは決していえませんが、法規の試験対策を重点的に行うことが合格へ繋がる勉強のポイントになります。
注目の令和1年度試験の合格基準点と今後の動向
これまでここ10年の動向を見てきましたが、今度は2019(令和1)年度の結果を見てみましょう。
<2019年受験実績>
受験申込者数 59,234名(61,941名)
受験者数 41,543名(42,976名)
受験率 70.1%(69.4%)
※( )内は平成30年度の実績
申込者数、受験数共に昨年より減少しているものの、わずかながら合格率は上昇しています。
<2019年合格実績>
合格者数 3,879名(3,918名)
合格率(4科目合格者) 9.3%(9.1%)
合格率(科目合格者) 32.1%(28.7%)
※( )内は平成30年度の実績
合格者数は昨年より減少しているものの、4科目合格率と科目合格率は増加しています。
<2019年科目合格基準点と合格率>
理論 55点
電力 60点
機械 60点
法規 49点
電力は11年ぶりに合格点が60点になりました。機械については過去15年間合格点が60点に到達していないので、数十年ぶりということになります。逆に法規は49点と過去15年を振り返ってもここまで低くなったことはありません。
易しい年の翌年は難しくなるといった都市伝説もありますが、先述の傾向を見て頂いてもこの法則が綺麗に当てはまることはありません。基本的に国家試験は60点を取れるように毎年問題を作成していますが、実際は受験者によっても、また問題の質によっても調整が入ります。
電力と機械については問題が易化しているのではなく、受験者の努力とみるべきでしょう。従って、来年以降も問題の難易度はさほど変わらないと思います。
法規についてもう少し細かく見ていくと、特に電力と関わりのある法規が難しくなっている傾向があります。確実に正答できる問題を解くという考え方もあるかもしれませんが、法規を重点的に勉強し、ある程度難しい問題にも対応できるようにする方が確実といえます。
電験三種の法規とはどんな試験か
電験三種の試験の科目
電験三種は以下の4科目で構成されており、それぞれ合格基準点に到達すれば「科目合格者」となります。科目合格者は合格した翌年から2年間は合格した科目が免除されます。従って、3年間で4科目に合格できればいいということになります。
<電験三種の4科目>
〇理論・・・電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測に関するもの。
配点5点のA問題14題+配点10点のB問題3題
試験時間:90分
〇電力・・・発電所、変電所の設計及び運転、送電線路、配線線路(屋内配線を含む)の設計及び運用、並びに電気材料に関するもの。
配点5点のA問題14題+配点10点のB問題3題
試験時間:90分
〇機械・・・電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス、並びに電力システムに関する情報伝達、処理に関するもの。
配点5点のA問題14題+配点10点のB問題3題
試験時間:90分
〇法規・・・電気法規(保安に関するものに限る)及び電気施設管理に関するもの。
配点6点のA問題10題+配点13点のB問題2題+配点14店のB問題1題
試験時間:65分
電験三種法規の特徴
電験三種の法規は科目別合格率をみても圧倒的に難しい科目となっています。主な理由は5つあります。
①出題数が少なく、1問の配点が高い
②試験時間が短い
③出題範囲が広い
④出題率が分散している
⑤試験時間が最後である
つまり、疲れてへとへとになっている所に、予測のつかない出題というパンチでノックアウトという科目ということです。
ですが!諦めることはありません。
どんな試験にも勉強のコツがあります。正しく分析をして、満点ではなく60点を目指す勉強法をすれば必ず合格できます。次の項目からはそのコツをご紹介します。
電験三種【法規】の合格点に達するための勉強方法
優先順位を立てて勉強する
電験三種の法規はどのような出題で構成されている科目でしょうか。「法規」なんだから法律でしょ?と思う方が多いかもしれません。法律の問題も確かにありますが、実は出題数を数えてみると40%以上が計算問題で構成されています。
しかもこの計算問題、出題率が高く問題のパターンが少ないので効率がよく、配点の高いB問題の為、得点の土台を作ることができます。法規の範囲の中で最優先は計算問題ということがわかります。しかし、計算問題だけを勉強したのでは法規は合格できませんのでご自身の能力に応じて勉強時間の配分をしてください。
効率よく暗記する
計算問題で土台の40%を作ったら、次は法律です。具体的には電験三種の法規は7つの法令で構成されています。
①電気設備に関する技術基準を定める省令
②電気事業法
③電気関係報告規則
④発電用風力設備に関する技術基準を定める省令
⑤電気用品安全法
⑥電気工事士法
⑦電気工事業の業務の適正化に関する法律
法令としては7つですが、法律には必ず解釈・施行令・施行規則が付随します。
司法試験ではありませんので、これらをすべて暗記しようと思ったらそれは遠大な計画です。また、最初から深入りするのは禁物です。法令を覚えていないから演習問題に進めないという状態になってしまったら、勉強が進みません。
法令の勉強のコツとしては、まず①を後回しにすることです。①は条文が300条近くあり、他の法令と比べてもダントツに膨大です。また、出題率が分散しており予測が立てにくいのも特徴です。計算問題と他の法令をしっかりとおさえれば、合格には十分手が届きます。
文章問題は暗記が基本です。とはいえ、長い法令を丸ごと暗記するのは大変です。暗記のコツは解説を十分にしてくれている参考書を読み込んで、理解することです。特に、出題率の高い条文に絞って解説をしてくれている参考書がおすすめです。出題率の低い条文は過去問演習時に覚えてしまえば問題ありません。
②~⑦の電気関係法規は空欄補充問題が多く出題されます。条文の内容を理解し埋められるように練習をするのがポイントです。①は正誤問題や計算問題で出題されることが多くなっています。図や表を使って数値を暗記することがポイントです。
3つ目のコツは「条文番号を暗記しようとしない」ことです。過去問を調べても条文番号が問われたことは一度もありません。
過去問題を何度も演習する
仕上げは過去問です。昔は過去問をやっておけば法規だけは合格できるというほど簡単でしたが、先に触れた通りここ10年間で法規はどんどん難化しており、過去問だけでは合格できません。
ですが、合格するための勉強法としての過去問演習は、計算問題・参考書による法令の暗記に続く、3本柱となります。法規の勉強に割く時間が十分にある方は15年分、ない方は10年分を解いておけば、合格には十分です。過去問をやることで脳に記憶が定着しやすくなります。
まとめ
電験三種の法規は、一発合格を目指す方にとっては一番勉強時間を割けない科目でしょう。合格率は低く難化している法規ではありますが、出題数や配点の高い計算問題から始めることで、得点の土台を築くことができます。
そのうえで、長い法令は後回しにして、出題率の高い条文にターゲットを絞って学習すれば決して合格できない科目ではありません。
コツをおさえて効率よく学習をすれば、法規は味方になります。計算問題と頻出の条文をおさえたら、あとは過去問を繰り返して記憶の定着をはかりましょう。