アーク溶接の作業は、生産工場や建設現場など多くの場面において広範囲に行われる作業であるため、身につけることでかなり役に立ちます。
しかし、危険を伴う作業でもあるため、事業者は作業従事者に対して特別教育を受講させることが義務づけられています。
そこで今回は、アーク溶接作業者になるために必要である、アーク溶接等特別教育の概要と受講方法について解説します。
目次
アーク溶接について
そもそもアーク溶接等特別教育がどういった理由で義務づけられているのか、需要はあるのか、その詳細について解説していきます。
アーク溶接等特別教育が義務づけられている理由
アーク溶接の作業に伴い溶接装置の不備または保守の不良、溶接作業方法の不適切による作業者の感電、高所からの墜落、溶接中のアークによる火災や爆発などの重大災害が発生しています。
そのため、労働安全衛生規則では「事業者はアーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断などの業務に労働者を就かせる際には特別教育を実施しなければならない」と義務づけられています。
ちなみに、アーク溶接とは溶接方法の1つで、金属の電極と溶接する対象物の間で火花を起こし、溶接を施す作業のことです。
アーク溶接の需要
アーク溶接は、生産工場や建設現場、造船や車の製造など多くの場面において広範囲に行われる作業であるため、1度技術を身につけると生涯役に立つとも言えます。
また、法律で受講が義務づけられていることもあり、有資格者は多方面からニーズがあります。
仕事場を選ぶことができるので、転職などで有利に働くのも魅力の1つです。
では、特別教育はどういった内容で実施されるのでしょうか?次のセクションでは、アーク溶接等特別教育の概要について解説します。
アーク溶接等特別教育の概要
アーク溶接作業者は、厳密には国家資格ではありません。そのためアーク溶接作業に従事する際は、資格ではなく「アーク溶接等特別教育」という特別教育の修了証が必要です。
そして、その修了証を取得するためには「アーク溶接等の業務に係る特別教育」を受講しなければいけません。
アーク溶接等の業務に係る特別教育の修了が必要
アーク溶接作業に従事する際は特別教育の受講が必要なことは先ほどお話ししましたが、ここでは、特別教育の具体的な実施内容について解説します。
講習内容や費用、講習日数について必要な情報を確認してください。
講習内容
アーク溶接等特別教育では「学科」と「実技」の2つ実施されます。
学科では、必要知識と労働安全衛生法をはじめとした関係法令を学び、実技では、アーク溶接装置の取扱いおよびアーク溶接などの作業の方法について行います。
費用
アーク溶接等特別教育の講習費用は、受講する機関によって異なります。
目安としては、テキスト代と消費税込みで10,000円~25,000円が一般的です。
ちなみに、講習を受講できる会場には商工会議所や一般企業、公的機関などがあります。
日数
アーク溶接の特別教育は、学科で合計11時間、実技で10時間の受講を終えると修了できます。学科のみであれば日数は1日半、学科と実技をあわせると3日間の講習です。
講義内容
アーク溶接等特別教育の学科と実技それぞれの講義内容と実施時間については、次のとおりです。
学科 | ||
---|---|---|
No | 講習内容 | 実施時間 |
1 | アーク溶接などに関する知識 | 1時間 |
2 | アーク溶接装置に関する基礎知識 | 3時間 |
3 | アーク溶接などの作業方法に関する基礎知識 | 6時間 |
4 | 関係法令 | 1時間 |
実技 | ||
1 | アーク溶接装置の取扱いおよびアーク溶接などの作業の方法 | 10時間以上 |
上記がアーク溶接等特別教育のカリキュラムです。
今後、アーク溶接の作業に従事する際に必要な知識を身につけるため、講習中は集中して受講しましょう。
修了証
アーク溶接等特別教育を実施している講習会場で受講すると、原則として当日に写真入りの修了証が交付されます。
修了証が交付されると、鉄工場や車の製造、生産工場や建設現場などで仕事に従事できます。
もし、修了証を紛失してしまった場合には再発行の手続きが必要です。
再発行
修了証を再発行する際には、修了証の写しがある場合と修了証の写しがなく、取得した団体がわからない場合の2パターンがあります。
それぞれの再交付の手続きの流れとしては、次のとおりです。
修了証の写しがある場合 | |
---|---|
No | 再交付までの流れ |
1 | 「労働技能講習協会」へ連絡し、再交付申請書をFAXまたは郵送で依頼もしくはHP上で再交付申請書をプリントする。 |
2 | 必要事項を記入した後、郵送する。 |
3 | 「労働技能講習協会」が修了証を作成した後、指定された場所へ郵送。(1週間以内に発送されます。) |
修了証の写しがない場合 | ||
---|---|---|
項目 | No | 再交付までの流れ |
技能講習の場合 | 1 | 「中央労働災害防止協会安全衛生情報センター」へ連絡して、資格を取得した団体を確認する。 |
2 | 取得した講習団体にて再交付の申請を行う。 | |
特別教育などの場合 | 1 | 一緒に受講した人に聞くなど自分で資格取得団体を調べる。 |
上記が修了証再発行の流れです。
色々と手続きが増えるため、修了証はなくさないように注意しましょう。
アーク溶接等特別教育の受講資格と難易度
続いて、アーク溶接等特別教育の受講資格と難易度について解説します。
資格を取得するための条件や難易度について確認してください。
資格を習得するための条件は?
アーク溶接の資格を取得するための条件は特にありません。18歳以上の方であれば、誰でも特別教育の受講が可能です。
特別教育は技術系の専門学校や社団法人などが実施しており、学科と実技をセットで受講するものがほとんどです。
難易度は?
特別教育の講習では原則、テストなどは行われません。
アーク溶接の専門知識を有した講師が細かく説明するので、テキストなどと一緒に自分に必要な知識を身につけましょう。
難易度としては、学科講習よりも実技講習の方が高いと言えるでしょう。技術者の指導のもと、実際に溶接を行います。とはいえ、どちらも事前に予習する等は必要ありません。
肌で感じながら実技講習で基礎と技術力をしっかり学びましょう。
アーク溶接等特別教育はどこで受けられる?
ここでは、アーク溶接等特別教育をどこで受けられるのか、その情報について解説します。
各都道府県の労働基準協会
アーク溶接等特別教育を受講する1つ目の方法が、各都道府県にある労働基準協会などの講習機関で受講するといった方法です。
各都道府県には「労働基準協会」が設けられており、多くの特別教育の講習を取扱っています。
ただし、中には特別教育を実施していない都道府県もあるため、自身の地域の労働基準協会が実施しているかスケジュールを確認しておきましょう。
各種協会
アーク溶接等特別教育を受講する2つ目の方法が「各種協会」で受講するといった方法です。
地域によって変わりますが、労働基準協会以外にも「技能講習協会」や「溶接協会」など技能的な特別教育を専門的に実施している機関があります。
労働基準協会にてアーク溶接等特別教育が実施されていない場合には、こういった各種協会で実施の有無を確認してください。
Web講座
アーク溶接等特別教育を受講する3つ目の方法が「Web講座」を受講するといった方法です。
Web講座は、ネットで受講できる特別教育なので場所や時間を選ばずに修了証まで手に入れられるのが最大の魅力です。
ここでは、Web講座の1つである「SAT」のWeb講座を例に解説します。
SATのWeb講座で使用されているテキストは、図や表を用いて丁寧に解説されているため、非常にわかりやすいのが特徴です。
動画講義においては、学科合計12時間57分の内容が項目ごとにわけて専門の講師が解説しているため、効率的に知識を身につけられるでしょう。
また、スマホやパソコンで視聴可能なのもメリットの1つです。昼夜場所を問わず好きな場面で学習を進められます。
時間帯に関係なく視聴できる動画講義を活用して、アーク溶接に関する必要な知識を身につけましょう。講義動画のサンプルも公開しています。
アーク溶接等特別教育はWeb講座がオススメ!
今回の記事では、アーク溶接等特別教育の概要と受講方法について、詳細やWeb講座の受講方法とあわせて解説しました。
アーク溶接等特別教育は、アーク溶接に関する作業に従事する際、作業者の安全を確保するうえで非常に大切なので必ず受講する必要があります。
受講は実際の会場に行って講習を受けることもできますが、SATのWeb講座であれば、わかりやすいテキストや動画講義を用いて場所を問わずに受講できるため、日中仕事が忙しい方などは受講を検討しましょう。