保護具着用管理責任者教育は、化学物質のリスクアセスメントを行い、結果に基づいて労働者に保護具を使用させる際の管理者に必要な教育です。
労働安全衛生規則の一部が改正され(2024年4月1日施行)、保護具着用管理責任者の選任が義務付けられることとなりました。
本記事では、保護具着用管理責任者教育の概要や受講内容、受講方法を解説します。受講のメリットや資格の需要もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
保護具着用管理責任者教育とは?
冒頭でも触れましたが、保護具着用管理責任者教育は、化学物質のリスクアセスメントに伴って労働者に保護具を使用させる際の管理者に必要な資格です。
労働安全衛生規則の一部を改正する省令によって、2024年4月1日以降選任が必要となりました。
また、保護具着用管理責任者は下記の「保護具に関する知識および経験を有する者」から選任しなければならないのも特徴です。
<保護具に関する知識および経験を有する者>
- 労働衛生コンサルタント
- 第一種衛生管理者
- 衛生工学衛生管理者
- 各作業主任者 など
上記のような方であれば、保護具着用管理責任者の選任要件に該当します。該当者がいない場合は、保護具着用管理責任者教育の受講者から選任しなければならないことが定められている傾向です。
ただし、上記の資格保有者も責任者教育の受講は望ましいとされています。
そのため、保護具着用管理責任者として従事する可能性がある方は、講習を受講するのがよいといえるでしょう。
保護具着用管理責任者教育を受講するメリット
保護具着用管理責任者教育を受講するメリットは、以下の通りです。
- 取得後の仕事の幅が広がる
- 技術者としての付加価値が高まる
保護具着用管理責任者教育を取得すると、これまで従事できなかった保護具を使用する労働者の管理業務に従事可能です。そのため、資格を取得する前と比較して仕事の幅が大きく広がります。
また、労働安全衛生規則の改正省令が公表されて期間が経っていないため、受講修了者が多くないのも特徴です。講習を修了することで技術者としての付加価値がこれまでよりも高まります。
付加価値が高まると企業から重宝される人材となったり将来的なキャリアアップにつながったりするのがメリットです。労働災害防止の観点からも取得して損のない資格といえるでしょう。
保護具着用管理責任者は今後も需要が高い!
保護具着用管理責任者は、法改正の影響もあり今後も需要の高まりが望めます。また先ほど申し上げ通り、省令の改正から期間が経っておらず、受講者の数が多くないためです。
もちろん現場での安全や労働災害防止の観点からみても保護具の着用は欠かせません。そのため、保護具を使用する労働者の管理を行う保護具着用管理責任者は、今後も需要がなくならないことがわかります。
講習を受講することで今まで以上の技術や知識が身につくため、技術者としてのレベルアップも狙えるでしょう。
保護具着用管理責任者教育の受講内容
ここまで、保護具着用管理責任者の概要やメリット、資格の需要に関して解説しました。とはいえ「講習がどんな内容で実施されるのか」まで把握していなければ、スムーズに講習を受講できません。
ここからは、保護具着用管理責任者教育の受講内容や受講方法を解説します。
保護具着用管理責任者教育の受講対象者
保護具着用管理責任者教育の受講対象者は、以下の通りです。
項目 |
対象者 |
---|---|
義務づけられている方 |
保護具着用管理責任者の資格を保有していない方で、保護具着用管理責任者としての従事を考えている方 |
受講が望ましい方 |
保護具に関する知識・経験を有していると認められる方(以下の資格保有者) ・化学物質管理専門家に該当する方 |
受講が望ましい方に関しても、労働災害を防止する観点からいえば、保護具着用管理責任者教育の受講をおすすめします。
講習を受講して保護具を使用する労働者の安全を守りつつ、自分自身の付加価値も高めましょう。
保護具着用管理責任者教育の実施内容
保護具着用管理責任者教育は、学科講習と実技講習で構成されています。それぞれの講習時間がどのくらいなのか詳しくみていきましょう。
学科講習の実施内容
学科講習の実施内容は、以下の通りです。
項目 |
講習内容 |
講習時間 |
---|---|---|
保護具着用管理 |
・保護具着用管理責任者の役割と責務 |
0.5時間 |
保護具に関する知識 |
・保護具の適正な選択に関すること |
3時間 |
労働災害の防止に関する知識 |
保護具使用にあたって留意すべき労働災害の事例および防止方法 |
1時間 |
関係法令 |
安全衛生法、安全衛生省令および安全衛生規則における関係条項 |
0.5時間 |
合計 |
5時間 |
出典:厚生労働省「保護具着用管理責任者に対する教育の実施について」
学科講習では、保護具や労働災害の防止に関する知識・関係法令などを5時間の講習で学びます。実技講習と違って実際に保護具を取り扱うことはありませんが、労働災害防止にむけて必要な知識を学ぶため、学科講習は欠かせません。
保護具着用管理責任者として労働者や現場で起こりうる労働災害を防止するため、集中して講習に取り組むことが大切です。
実技講習の実施内容
実技講習の実施内容は、以下の通りです。
項目 |
講習内容 |
講習時間 |
---|---|---|
保護具の使用方法など |
・保護具の適正な選択に関すること |
1時間 |
出典:厚生労働省「保護具着用管理責任者に対する教育の実施について」
実技講習では、学科講習で学んだ内容を実際に実技を通して1時間学びます。
実技講習を終えたら修了証が交付されるため、現場で安全に留意して従事するためにも、非常に重要な講習です。
講習時間が1時間と比較的短いため、限られた時間の中で自分に必要な知識や技術をしっかりと身につけましょう。
保護具着用管理責任者教育の受講料金
保護具着用管理責任者教育の受講料金は、実施している講習機関によって異なります。費用の相場としては、20,000円前後です。
また、講習機関によってはテキスト代や修了証の発行代金が別料金の可能性もあります。そのため、受講前に受講を考えている機関の費用がどのくらいなのか必ず確認しておきましょう。
保護具着用管理責任者教育の受講方法
保護具着用管理責任者教育の受講方法は、主に以下の2つあります。
- 講習機関の講習を受講する
- Web講座を受講する
それぞれの受講方法について詳しく解説します。
受講方法①講習機関の講習を受講する
保護具着用管理責任者教育は、講習機関が実施する講習を受講すると修了できます。ただし、機関によって開催地域や日程が異なるため、事前に情報の確認が大切です。
講習機関を選ぶ際は、スケジュールを調整しつつ、受講費用や会場場所などを踏まえて選択するのがよいでしょう。
受講方法②Web講座を受講する
仕事が忙しい方でスケジュールを調整したり講習会場に足を運んだりするのが面倒な場合は、Web講座やオンラインで受講する方法があります。
実際、厚生労働省でも「学科教育においてオンライン形式でも差し支えない」と記載されており、講習機関の中には学科教育の動画を配信している場合もある傾向です。
ただし、実技講習に関しては実際に会場に足を運んだり講師を用意して自社で開催したりする必要があります。Web講座を取り扱っている機関も多くないため、情報を十分に確認したうえで受講をご検討ください。
保護具着用管理責任者教育のポイントまとめ
本記事では、保護具着用管理責任者教育の概要や受講するメリット、受講方法などを詳しく解説しました。改めて、ポイントをおさらいしましょう。
- 保護具着用管理責任者教育は労働安全衛生規則に改正によって選任が義務づけられている
- 保護具に関する資格の有無に関係なく講習は受講した方がよい
- 実施内容は学科講習と実技講習の2つある
- 講習機関の講習を受講して資格を取得するのが一般的
- 資格を取得することで仕事の幅が広がったり技術者としての付加価値を高められたりできる
保護具着用管理責任者教育を受講することで、現在よりも仕事の幅は広がります。
労働者の安全を確保するだけでなく、現場での労働災害防止につながるため、企業からより重宝される人材となれるでしょう。
ぜひ、保護具着用管理責任者教育を受講してみてください。