空調などの配管工事の国家資格である管工事施工管理技士は、1級と2級に区分されています。1級のレベルが高いことはおおよそ理解できますが、具体的にどのような違いがあるのか、ご存じない方も多いのではないでしょうか?こちらでは、管工事施工管理技士の1級・2級において、受験資格と業務領域、試験問題などの違いについて解説します。
目次
【管工事施工管理技士】1級と2級の受験資格と業務領域の違い
管工事施工管理技士の1級・2級の受験資格と、業務領域について見ていきましょう。
受験資格の違い
管工事施工管理技士は受験資格を満たす必要があり、1級と2級で実務経験年数が以下のように異なります。
・1級の受験資格
1級の学科試験・実地試験を受験する場合、1年以上の指導監督的業務を含め、以下の実務経験年数が必要です。
学歴 | 実務経験年数 | |
---|---|---|
指定学科卒業 | 指定学科以外卒業 | |
大学 専門学校(高度専門士) |
3年以上 | 4年6ヶ月以上 |
短大 高等専門学校 専門学校(専門士) |
5年以上 | 7年6ヶ月以上 |
高校 中学 専門学校(「高度専門士」「専門士」を除く) |
10年以上 | 11年6ヶ月以上 |
その他 | 15年以上 |
また、2級管工事施工管理技士の合格者は、以下の条件を満たすと受験可能です。(1年以上の指導監督的実務経験を含む)
区分 | 学歴 | 実務経験年数 | |
---|---|---|---|
指定学科卒業 | 指定学科以外卒業 | ||
2級合格後の実務経験 | – | 5年以上 | |
合格後5年未満の者 | 高校 中学 専門学校(「高度専門士」「専門士」を除く) |
9年以上 | 10年6ヶ月以上 |
その他 | 14年以上 |
このように、2級合格後に5年以上の実務経験があれば、1級の受験資格が得られます。実務経験年数が優遇される大学や短大の学歴がない場合、2級を取得する方法が最短ルートといえるでしょう。また、受験資格と実地試験年数は細分化されており、管工事の選任の主任技術者経験、監理技術者の指導を受けた実務経験年数など、条件が異なるので確認が必要です。
また、指定学科とは、土木、都市工学、電気工学、機械工学など、建築学に関連する学科を指します。高度専門士と専門士は、所定の要件を満たしたと文部科学大臣が認める専門課程を修了した称号です。
・2級の受験資格
2級の学科試験だけを受験する場合の受験資格は、「満17歳以上」であることです。学歴や実務経験年数の指定がないので、学科試験を先に受験することも可能です。
ただし、学科試験と実地試験を同時に受験する場合、以下の条件を満たす必要があります。
学歴 | 実務経験年数 | |
---|---|---|
指定学科卒業 | 指定学科以外卒業 | |
大学 専門学校(高度専門士) |
1年以上 | 1年6ヶ月以上 |
短大 高等専門学校 専門学校(専門士) |
2年以上 | 3年以上 |
高校 中学 専門学校(「高度専門士」「専門士」を除く) |
3年以上 | 4年6ヶ月以上 |
その他 | 8年以上 |
また、実地試験のみを受験する場合、学科試験の合格と、学科・実地の受験資格を満たす必要があります。
業務領域の違い
業務領域とは、業務上で務めることができる役割です。
1級では大規模な建設工事にあたる特定建設業、それ以外の一般建設業において、専任技術者・主任技術者・監理技術者として認められます。2級では一般建設業の専任技術者・主任技術者を務めることが可能です。
工事を請け負うためには、営業所に専任技術者、工事現場ごとに主任技術者を配置する必要があります。監理技術者は特定建設業者が請け負う大規模工事に配置が必要で、1級のみが務めることができる役割です。
1級はすべての役割を務められますが、2級では専任技術者と主任技術者に留まるのが大きな違いです。
経営事項審査の違い
経営事項審査とは、国や自治体の公共工事を請け負う際に必要な審査のことです。施工管理技士の人数で点数がつけられるのが特徴で、1級は5点、2級は2点、監理技術者講習受講者は1点追加といった仕組みです。
1級の施工管理技士は点数が高いため、企業側にとって1級の有資格者が多ければ多いほどメリットがあります。
【管工事施工管理技士】1級と2級の試験問題の違い
管工事施工管理技士の試験は、1級・2級ともに学科試験と実地試験が課されます。そこで、1級と2級の試験問題の具体的な違いを確認しましょう。
学科試験の違い
学科試験はマークシートの4肢択一式で出題され、1級では全73問中60問正解、2級では52問中40問正解で合格基準点を満たします。
1級の出題科目は以下の6分野があり、必須科目と選択科目に分かれます。
必須 | 一般基礎…環境工学、液体工学、熱工学など |
---|---|
必須 | 電気、建築…電気動力一般、建築一般 |
選択 | 発電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む。以下同じ。)の設計及び運用並びに電気材料に関するもの |
選択 | 空気設備、衛生設備…空気調和、上下水道、消防設備、浄化槽など |
必須 | 施工管理…施工計画、工程管理、品質管理、安全管理 |
選択 | 関連法規…建築基準法、労働基準法、水道法、消防法、労働安全衛生法など |
また、2級は問題数が少なくなるものの、出題科目は1級とほぼ同じです。
実地試験の違い
実地試験は学科試験と異なり、すべて記述式で解答します。出題科目は、施工要領図の判読、空気調和設備、給排水設備、労働安全衛生法、経験記述で、これらは1級と2級で共通です。唯一の相違点は、工程管理が2級ではバーチャートの作成、1級ではネットワーク工程表であることです。
ただし、1級の出題傾向はより複雑になるため、難易度も高くなります。例えば、空調設備と給排水設備では、2級に関しては留意点を4つ以上書けば点数がつきますが、1級では各種施工や試運転調整が絡むため、難易度が高くなるのです。
管工事施工管理技士は1級と2級でさまざま違いがある
管工事施工管理技士の1級と2級は、受験資格と業務領域に違いがあります。学歴に基づく実務経験年数の差が大きいため、実務経験が少ない方は2級から1級を目指すルートが早いでしょう。業務領域では1級は監理技術者になれるうえに、経営事項審査で5点加点される一方、2級では専任技術者と主任技術者に限られます。
学科試験の科目は1級・2級でほぼ共通していますが、大規模な建設現場で監理技術者を務められる1級の難易度はやはり高くなります。1級と2級は似ているようで大きな違いがあるので、特徴を理解してから受験しましょう。
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