公害防止管理者は、公害が発生するおそれのある工場に選任される、公害を未然に防ぐための資格です。受験するにあたり、合格率や試験の難易度が気になる方も多いでしょう。
今回は、公害防止管理者資格の概要を踏まえ、国家試験の合格率と難易度、試験科目を紹介していきます。
目次
公害防止管理者の取得方法と試験科目
公害防止管理者の概要と試験区分を見ていきましょう。
公害防止管理者とは?
公害防止管理者は、公害発生のおそれがある特定工場に選任し、大気や騒音などを検査して公害を未然に防ぐ役割を担います。
公害防止管理者の選任が必要な特定工場は、特定の事業内容、かつ指定の施設を備えた以下に該当する工場です。
No | 特定工場の事業内容 |
---|---|
1 | 製造業(物品の加工業を含む) |
2 | 電気供給業 |
3 | ガス供給業 |
4 | 熱供給業 |
No | 指定の施設 |
---|---|
1 | ばい煙発生施設 |
2 | 特定粉じん発生施設 |
3 | 一般粉じん発生施設 |
4 | 汚水等排出施設 |
5 | 騒音発生施設 |
6 | 振動発生施設 |
7 | ダイオキシン類発生施設 |
公害の原因は大気や水質、振動や騒音などさまざまです。そのため、公害防止管理者資格は、以下の13種類の試験区分があります。
No | 公害防止管理者の試験区分 |
---|---|
1 | 大気関係第1種公害防止管理者 |
2 | 大気関係第2種公害防止管理者 |
3 | 大気関係第3種公害防止管理者 |
4 | 大気関係第4種公害防止管理者 |
5 | 水質関係第1種公害防止管理者 |
6 | 水質関係第2種公害防止管理者 |
7 | 水質関係第3種公害防止管理者 |
8 | 水質関係第4種公害防止管理者 |
9 | 騒音・振動関係公害防止管理者 |
10 | ダイオキシン類関係公害防止管理者 |
11 | 特定粉じん関係公害防止管理者 |
12 | 一般粉じん関係公害防止管理者 |
13 | 公害防止主任管理者 |
水質関係・大気関係にある「第1種~第4種」の区分は、選任できる公害発生施設の範囲の違いです。
第1種は水質または大気のすべての公害発生施設に選任が可能で、第2種~第4種は選任できる施設の種類が少なくなります。
公害防止管理者資格の取得方法
公害防止管理者を取得するには、以下2つの方法があります。
- 国家試験に合格する
- 公害防止管理者等資格認定講習を受講し、修了試験に合格する
2つ目の認定講習の受講には技術資格や学歴・実務経験による書類審査が必要のため、受講できる人が限られるのが難点といえます。
一方、1つ目の国家試験の場合は学歴や年齢、実務経験など受験資格の制限は一切ありません。
未経験から公害防止管理者を取得したい場合、国家試験の受験が近道になるでしょう。
公害防止管理者国家試験の試験科目
試験区分における、試験科目、試験科目の範囲、問題数は次のとおりです。
公害防止管理者の試験科目 | |||
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区分 | 試験科目 | 試験科目の範囲 | 問題数 |
全区分共通 | 公害総論 | (1)環境基本法及び環境関連法規の概要に関すること (2)特定工場における公害防止組織の整備に関する法律体系に関すること (3)環境問題全般に関すること (4)環境管理手法に関すること (5)国際環境協力に関すること |
15問 |
大気及び粉じん関係 | 大気概論 | (1)大気汚染防止対策のための法規制に関すること (2)大気汚染の現状に関すること (3)大気汚染の発生機構に関すること (4)大気汚染による影響に関すること (5)国又は地方公共団体の大気汚染防止対策に関すること |
10問 |
大気特論 | (1)燃料に関すること (2)燃焼計算に関すること (3)燃焼方法及び燃焼装置に関すること (4)排煙脱硫技術に関すること (5)窒素酸化物排出防止技術に関すること (6)測定に関すること |
15問 | |
ばいじん・粉じん特論 | (1)処理計画に関すること (2)集じん装置の原理、構造及び特性に関すること (3)集じん装置の維持・管理に関すること (4)一般粉じん発生施設と対策に関すること (5)特定粉じん発生施設と対策、測定に関すること (6)ばいじん・粉じんの測定に関すること |
15問 | |
大気有害物質特論 | (1)有害物質の発生過程に関すること (2)有害物質処理方式に関すること (3)特定物質の事故時の措置に関すること (4)有害物質の測定に関すること |
10問 | |
大規模大気特論 | (1)拡散現象一般に関すること (2)拡散濃度の計算法に関すること (3)大気関係環境影響評価のための拡散モデルに関すること (4)大気環境濃度の予測手法に関すること (5)大規模設備の大気汚染防止対策の事例に関すること |
10問 | |
ばいじん・一般粉じん特論 | (1)処理計画に関すること (2)集じん装置の原理、構造及び特性に関すること (3)集じん装置の維持・管理に関すること (4)一般粉じん発生施設と対策に関すること (5)ばいじん・粉じんの測定に関すること |
10問 | |
水質関係 | 水質概論 | (1)水質汚濁防止対策のための法規制に関すること (2)水質汚濁の現状に関すること (3)水質汚濁の発生源に関すること (4)水質汚濁の機構に関すること (5)水質汚濁の影響に関すること (6)国又は地方公共団体の水質汚濁防止対策に関すること |
10問 |
汚水処理特論 | (1)汚水等処理計画に関すること (2)物理・化学的処理法に関すること (3)生物的処理法に関すること (4)汚水等処理装置の維持・管理に関すること (5)測定に関すること |
25問 | |
水質有害物質特論 | (1)有害物質の性質と処理に関すること (2)有害物質含有排水処理施設の維持・管理に関すること (3)有害物質の測定に関すること |
15問 | |
大規模水質特論 | (1)水質汚濁物質の挙動に関すること (2)処理水の再利用に関すること (3)大規模設備の水質汚濁防止対策の事例に関すること |
10問 | |
騒音・振動関係 | 騒音・振動概論 | <騒音関係> (1)騒音対策のための法規制に関すること (2)騒音公害の現状と施策に関すること (3)主要な騒音発生源に関すること (4)騒音の感覚に関すること (5)騒音の影響・評価と基準に関すること (6)音の性質に関すること |
25問 |
<振動関係> (1)振動対策のための法規制に関すること (2)振動公害の現状と施策に関すること (3)主要な振動発生源に関すること (4)振動の感覚及び評価に関すること (5)振動の影響に関すること (6)振動の性質に関すること |
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<騒音・振動関係> (1)dBについての計算に関すること (2)低周波音に関すること |
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騒音・振動特論 | <騒音関係> (1)騒音防止技術に関すること (2)騒音の測定技術に関すること |
30問 | |
<振動関係> (1)振動防止技術に関すること (2)振動の測定技術に関すること |
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ダイオキシン類関係 | ダイオキシン類概論 | (1)ダイオキシン類対策のための法規制に関すること (2)ダイオキシン類問題の背景に関すること (3)ダイオキシン類排出の現状に関すること (4)ダイオキシン類の性質に関すること (5)ダイオキシン類汚染の発生機構に関すること (6)ダイオキシン類汚染による影響に関すること (7)国又は地方公共団体のダイオキシン類汚染防止対策に関すること |
15問 |
ダイオキシン類特論 | (1)大気関係ダイオキシン類対策に関すること (2)大気関係ダイオキシン類対象施設に関すること (3)水質関係ダイオキシン類対策に関すること (4)水質関係ダイオキシン類対象施設に関すること (5)測定に関すること |
25問 |
各科目の解答方法は5者択一式のマークシート方式、合格基準は全科目で60%以上の正答率が必要です。公害防止管理者の資格を取得するには、全科目を合格しなければなりません。
ただし、公害防止管理者国家試験には科目別合格制度があります。受験した試験区分で一部の科目だけ合格した場合、最初に合格した年を含めて3年までは科目が免除になる制度です。
一部科目が不合格になっても、2年以内で残りの科目を合格する、というスタイルの受験も可能です。
公害防止管理者試験の合格率&難易度
公害防止管理者試験における直近の合格率と、試験内容の難易度を紹介します。
【2023年度試験】公害防止管理者の区分別合格率
2023年度における試験区分ごとの受験人数、合格者数、合格率は次のとおりです。
2023(令和5)年度の公害防止管理者合格率 | |||
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試験区分 | 受験者数(人) | 合格者数 | 合格率 |
大気関係第1種 | 4,373 | 834 | 19.1% |
大気関係第2種 | 215 | 57 | 23.3% |
大気関係第3種 | 961 | 104 | 10.8% |
大気関係第4種 | 1,402 | 141 | 10.1% |
水質関係第1種 | 6,610 | 2,085 | 31.5% |
水質関係第2種 | 1,319 | 241 | 18.3% |
水質関係第3種 | 596 | 158 | 26.5% |
水質関係第4種 | 2,491 | 443 | 17.8% |
騒音・振動関係 | 1,267 | 336 | 26.5% |
特定粉じん関係 | 282 | 102 | 36.2% |
一般粉じん関係 | 245 | 44 | 18.0% |
ダイオキシン類 | 687 | 291 | 42.4% |
主任管理者 | 46 | 14 | 23.6% |
出典:一般社団法人 産業環境管理協会 令和5年度公害防止管理者等国家試験結果
公害防止管理者試験の難易度
公害防止管理者の試験内容は出題範囲が広い反面、問題数が少ないことで対策が難しい傾向にあります。そのため、先に述べた科目合格制度を活用し、何年もかけて合格する人が多いです。
公害防止管理者国家試験を実施する産業環境管理協会が発表したデータによると、科目免除なしで一発合格した人は、ダイオキシン類を除いた区分で「1割前後」です。
令和5年度の例でいえば、大気関係第1種の免除申請なしの合格率はわずか1.6%です。申請ありの人が26.8%もいることを考えると、一発合格の難しさがわかるかと思います。
それだけ公害防止管理者国家試験を一発で合格することは難易度が高く、取得しにくい資格といえるでしょう。
公害防止管理者は難易度の高い国家資格
公害防止管理者は、公害が発生する特定工場で公害の原因を検査し、公害を未然に防ぐ重要な役割を持つポジションです。公害防止管理者資格の取得方法は、受験資格に制限がない国家試験を受けるのが近道といえるでしょう。
試験科目は範囲が広く、かつ問題数が少ないため対策が難しいといわれています。実際に、公害防止管理者の合格率は各区分で20~30%前後と、難易度の高さがうかがえます。
試験区分によって出題範囲と難易度が異なりますが、科目別合格制度を活用すれば全科目を合格することも可能です。
無理に一発合格するよりも、科目別合格制度を上手に利用して数年計画での資格取得を目指しましょう。