動力プレスとシャーは金属加工に欠かせない機械であり、さまざまな製品の大量生産に役立っています。
動力プレスとシャーを扱うには、「動力プレスの金型等の業務に係る特別教育」の受講が必須です。しかし、なぜ特別教育の受講が必要なのでしょうか?
今回は、動力プレスとシャーの概要を踏まえ、特別教育の必要性や、特別教育の受講方法などについて解説します。
目次
動力プレス・シャーとは?
まずは、動力プレスとシャーの概要をおさらいしましょう。
動力プレスとは?
動力プレスは金属などを金型の間に挟み、金型の表面に押しつけることで金型と同じ形状を作る機械のことです。
金属のプレス加工は、せん断、曲げ加工、絞り加工、張出し成形に分類され、これらの加工を組み合わせることで、複雑な形も効率的に生産できます。なお、プレス加工は1回2~3秒で加工できるため、製品を大量生産できるのが特徴です。
プレス加工製品は、自動車部品、家電製品や日用品、精密機器などに使用されています。
シャーとは?
シャーとは、金属の切断加工で使用する、せん断機やシャーリングマシンのことです。シャーと一口にいっても、金属の厚さ、大きさ、作業効率、コスト調整など、さまざまな用途に合った機械が存在します。シャーの種類と特徴は、以下のとおりです。
No. | 機械名 | 特徴 |
---|---|---|
1 | メカシャーリング | 刃の動力が機械式でせん断のスピードは速い一方、6ミリ以上の板金には適さない。 |
2 | 油圧シャーリング | 刃の動力が油圧式のもの。機械式ほどせん断は速くないが6ミリ以上の板金にも使用可能。 |
3 | コーナーシャー | 素材の角(コーナー)をV字型などにせん断できる機械。 |
4 | バイブロシャー | 振動する刃で板金をせん断する機械。直線だけでなく円弧状にもせん断が可能。 |
5 | 足踏みシャーリング | 足踏みで刃を上下させてせん断する機械。薄い銅や亜鉛の金属板などであれば、高価なレーザー加工機がなくても代用が可能。 |
動力プレス・シャーを扱うには、動力プレス特別教育の受講が必須
動力プレスとシャーの取り扱いに特別教育が必要な理由と、必要な資格を紹介します。
動力プレス・シャーの取り扱いに動力プレス特別教育が必要である理由
動力プレスとシャーを使用するにあたり、動力プレスは金型、シャーは上刃と下刃の取付けや交換が必要です。
動力プレスとシャーは金属を曲げたり切ったりできるほど強い力が生じるため、使用方法を誤ると事故が発生する可能性があります。
過去にはプレス機械や金型に挟まれて死亡する事故や、板金のせん断中に指を切断するといった事故が起きており、使用には細心の注意が必要です。
労働安全衛生規則第36条2号の規定により、業務で動力プレス・シャーを取り扱う場合には「動力プレスの金型等の業務に係る特別教育(動力プレス特別教育)」を実施することが定められています。
動力プレスの金型等の業務に係る特別教育が必要な業務は、プレス機械の金型、シャーの刃部の取外しや調整、プレス機械やシャーの安全装置、安全囲いの取付けなどです。
動力プレス・シャーの扱いに必要な資格
動力プレス・シャーの業務に従事する際には、動力プレスの金型等の業務に係る特別教育のほか、「プレス機械作業従事者に対する安全教育」の受講や、「プレス機械作業主任者技能講習」の資格を取得する必要がある場合もあります。
プレス機械作業従事者に対する安全教育とは、プレス機械による労働災害防止を目的とするものです。プレス機械の種類や構造、安全装置と安全囲いなどの知識、作業前の点検方法や注意事項、関係法令などを学びます。事業場の安全衛生水準の向上のため、事業者が実施します。
一方、プレス機械作業主任者技能講習とは、5台以上の動力プレスやシャーを扱う事業場で選任する「作業主任者」になるために必要な資格です。作業の指揮をとることから、技能講習を受講するにはプレス機械の作業経験が5年以上必要です。
動力プレス特別教育の内容と受講方法
ここでは、動力プレスの金型等の業務に係る特別教育の受講内容、受講方法について解説します。
動力プレス特別教育には、学科講習と実技講習がある
動力プレスの金型等の業務に係る特別教育は、学科講習と実技講習をそれぞれ受講する必要があります。
学科講習と実技講習の受講科目、講習時間は以下のとおりです。
動力プレスの金型等の業務に係る特別教育の受講内容 | ||
---|---|---|
プレス機械又はシャー及びこれらの安全装置又は安全囲いに関する知識 | 2時間 | |
プレス機械又はシャーによる作業に関する知識 | 2時間 | |
プレス機械の金型、シャーの刃部又はプレス機械若しくはシャーの安全装置若しくは安全囲いの点検、取付け、調整等に関する知識 | 3時間 | |
関係法令 | 1時間 | |
プレス機械の金型、シャーの刃部又はプレス機械若しくは、シャーの安全装置若しくは安全囲いの点検、取付け、取外し及び調整について | 2時間 | |
合計 | 10時間 |
動力プレスの金型等の業務に係る特別教育では、学科を8時間、実技を2時間をそれぞれ実施する必要があります。
動力プレス特別教育の受講方法
動力プレスの金型等の業務に係る特別教育は、各地域の労働基準協会などで講習会を開催しています。学科講習と実技講習を両方実施する場合と、学科のみの場合があるので確認が必要です。
なお、学科講習のみ受講した場合、実技講習は所属の事業場で実施しなければなりません。金型やシャーの取付け、取外し、安全装置や安全囲いの点検などを、講師の立ち会いのもとで実施します。実技講習の講師は、動力プレスやシャーの知識や経験がある職場の上司などが務めます。
忙しい方は通信講座での受講も可能
協会の講習は平日に開催されることが多いため、時間を作れない場合は通信講座での受講がおすすめです。
学科講習をオンラインで受講するには顔認証が必要ですが、カメラ付きのパソコンやスマートフォンがあれば受講できます。
動画とPDFのテキストで勉強するため、自宅だけでなく通勤中や休憩中でも勉強が可能です。
また、講習会には試験がなく、最後まで受講すれば修了証がもらえますが、SATの通信講座では最終試験に合格すると修了証を受け取れます。
通信講座を利用することで動力プレスとシャーの危険性や取り扱い方法などの理解度がより高まるでしょう。
実技講習は、実技実施責任者の立ち会いのもと、2時間以上の実習を行います。通信講座が提供する「プレス作業実技マニュアル」により、実技講習がスムーズに実施できることもメリットの一つです。
動力プレス・シャーの取り扱いには、動力プレス特別教育が必要
動力プレスとシャーは金属加工の機械で、使い方を誤ると重大な事故を招く原因になります。
動力プレスとシャーを扱う業務に従事する場合、動力プレスの金型等の業務に係る特別教育のほか、プレス機械作業従事者に対する安全教育、プレス機械作業主任者技能講習などの受講が必要です。
動力プレスの金型等の業務に係る特別教育は、労働基準協会が開催する講習会、または通信講座で受講可能です。
通信講座は動画を用いるので場所と時間を選ばないことや、最終試験があることで内容の理解度が高くなるなどのメリットがあります。
仕事が忙しく講習会への参加が難しい方は、通信講座を上手に活用しましょう。