玉掛け特別教育は、クレーンなどで玉掛け用具を用いてつり荷を運搬する際、つり荷を掛けたり外したりする業務に必要な知識・技術を身につけるための講習です。
製造業・建設業・運送業・倉庫業などの業種を含め、クレーンなどを使用する職場では玉掛け特別教育の受講が必要です。
この記事では玉掛け特別教育の受講目的やメリット、技能講習との違いやおすすめの受講方法を紹介しています。
目次
玉掛け特別教育を受講する目的
玉掛けは、方法が不適切であったり玉掛け用具の点検を怠ったりして劣化した器具が原因で落下事故が生じた場合、大きな労働災害につながります。
そのため、つり上げ荷重1トン未満のクレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛けの業務に従事する作業者に対して特別教育の実施が義務付けられているというわけです。
先ほど解説した通り、玉掛けはさまざまな業種で行われる作業ですが、方法を誤ると大きな事故につながるため大変危険です。 中でも、つり上げ荷重が1トン未満のつり荷に係る玉掛け作業において死亡災害が多く発生しています。
自分たちの現場で事故が発生して自分が怪我したり周囲の人間を巻き込んだりするのは避けなければなりません。
仮に原因が自身にあった場合、大きな責任問題にもつながるでしょう。
そのため、安全衛生法や安全衛生規則では事業者に対してつり上げ荷重1トン未満のクレーン、移動式クレーン又はデリックの玉掛けの業務に従事する作業者に特別教育の実施を義務付けています。
玉掛け特別教育の受講する最大の目的は、労働災害を防止するためとなります。
玉掛け特別教育を受講するメリット
ここまでで、玉掛け特別教育の概要と受講する目的について解説しました。では、受講することで得られるメリットにはどういったものがあるのでしょうか?
玉掛け特別教育を受講するメリットは、以下の3つです。
玉掛け特別教育を受講するメリット
- 玉掛け作業に関する正しい知識や技術を有していることを証明できる
- 仕事の幅が広がる
- 技術者としての付加価値を現在よりも高められる
玉掛け特別教育を修了すると修了証が発行されます。未受講者では従事できない玉掛け作業において修了証は、正しい知識と経験を有していることの証明となります。
また、玉掛け特別教育を修了していると仕事の幅が広がるのもメリットです。これまでできなかったことができるようになるため、現場作業がスムーズに進むだけでなく頼りにされる存在として現場に従事できるでしょう。
加えて、現場での経験や実績が増えると企業から貴重な存在として重宝されやすくなります。結果、キャリアアップしたり評価がアップしたりすることもあるでしょう。
特別教育と技能講習の違い
玉掛け特別教育と玉掛け技能講習は、対象となるつり上げの荷重が異なります。
具体的には、特別教育は1トン未満、技能講習は1トン以上が受講対象です。 そのため、玉掛け技能講習を受けると特別教育よりも重い範囲の玉掛け作業を行えます。
また、玉掛け技能講習は各都道府県の登録機関で実施される講習です。学科5時間・実技4時間で構成されています。
特別教育と違い、学科・実技の両方で修了試験を受験する必要があり、修了すると労働安全衛生法にて定められている「つり上げ荷重1トン以上を含めたすべての移動式クレーン・クレーンデリック・揚貨装置の玉掛け作業」に従事可能です。このほか、技能講習は特別教育よりも講習時間が長く、講習費用も高い傾向です。
具体的な講習時間や講習費用は実施機関によっても異なる可能性があるため、受講前に必ず情報を確認しておきましょう。
玉掛け特別教育の受講対象者・対象業務
玉掛け特別教育の受講対象者は「玉掛け作業に従事する方」です。これから従事する可能性がある方に関しても受講をおすすめします。
特別教育受講の対象となる具体的な業務は「つり上げ荷重1トン未満のクレーン等を使用してつり荷を玉掛けする業務(つり上げ荷重0.5トン未満のクレーン等は適用除外)」です。
ただし、吊り上げ荷重1トン以上のクレーンなどを使用して吊り荷を玉掛けする際は、玉掛け技能講習の受講も必要となります。
また玉掛け特別教育は、安全衛生法や安全衛生規則に伴って特別教育の実施が義務付けられています。 もし受講を修了していない方が作業に従事した場合、作業者や事業者に対して罰則制度を適用される可能性が高いです。
労働災害防止の観点からみても、未受講者の作業従事は作業現場で従事する周囲の人間の事故にもつながりかねないため、受講対象者は必ず講習を受講した後で現場に従事しましょう。
このほか、玉掛け特別教育の修了証には有効期限は特に定められていません。一度講習を修了すれば更新なども特に必要なく、ずっと使用し続けることが可能です。
ただし修了証とあわせて交付される受講記録は、事業所の責任で3年間の保管する義務があります。
対象者に対して教育を修了したことを記録するものなので紛失しないようご注意ください。
玉掛け特別教育の受講内容
先ほども触れた通り、玉掛け特別教育は学科と実技講習の2つで構成されています。
学科では座学を通して玉掛け作業に関する基本的な知識を学び、実技では実演を通して玉掛け作業に関する技術を磨くのが特徴です。
玉掛け特別教育の講習は、以下の内容で実施されます。
玉掛け特別教育の受講内容 | |||
---|---|---|---|
種別 | 科目名 | 時間 | 種別別合計 |
学科 | クレーンに関する知識 | 1時間 | 5時間 |
クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識 | 1時間 | ||
クレーン等の玉掛けの方法 | 2時間 | ||
関係法令 | 1時間 | ||
実技 | クレーン等の玉掛け | 3時間 | 4時間 |
クレーン等の運転のための合図 | 1時間 | ||
合計:9時間(学科:5時間、実技:4時間) |
また、玉掛け特別教育の受講はさまざまな手段を用いて可能ですが、講習会場に足を運ぶ以外の方法で受講する場合、実技講習を事業所で実施しなければならない可能性があります。
その際は、事業所で実技実施責任者を選任し、受講者と同一場所で対面しながら講習を実施しましょう。このとき、実技実施責任者は玉掛け作業に関しての経験者であることが大切です。
玉掛け特別教育の受講方法
玉掛け特別教育を受講する方法は、主に以下の3つあります。
玉掛け特別教育の受講方法
- 現地開催の講習に参加する
- 出張講習を依頼する
- Webで受講する
現地開催の講習に参加する
まず挙げられるのが、全国各地で開催される講習を現地で受講する方法です。自身のスケジュールを調整して受講しなければなりませんが、受講を申し込んで参加するだけなので特に難しいことはありません。
講習費用や講習会場などを確認しつつ、自分に適していると感じた方は現地開催の講習に参加しましょう。
出張講習を依頼する
もし個人ではなく団体で受講したり会社で講習を実施したりしたい場合は出張講習を依頼する方法もあります。
講師の出張費や宿泊費などを支払う必要がありますが、自社のスケジュールで講習の実施日を決められるため、無理に講習会場に足を運ぶ必要がなくなります。
受講料金に関しては受講人数によって決まる場合もあるため、一度玉掛け特別教育の受講対象者などをまとめたうえで出張講習の依頼を考えるのがおすすめです。
Webで受講する
このほか、Web講座を受講して玉掛け特別教育を修了する方法もあります。 Web講座は、動画講義を閲覧して必要な知識を身につけ、修了すると修了証が発行される方法です。
これまで解説した方法と異なり、講習会場に直接足を運んだり講師を会社に呼んだりする必要がありません。 また、時間的制約がないのもメリットで、日々の隙間時間の中で自分のタイミングにあわせて受講を進められます。
SATでは、玉掛け特別教育の学科のみWeb講座を用意しております。 受講者にあわせて分かりやすい動画を用意しており、スマホやタブレットを用いて受講を進められます。
また、受講を全て修了した後に受け取ることができる修了証には、プラスチックカードタイプの他にスマートフォンアプリタイプの修了証も用意しております。アプリタイプの修了証であれば、SATで受講した他の特別教育や安全衛生教育の修了証を一括で管理することが可能です。
玉掛け特別教育の受講方法でお悩みの方はぜひSATのWeb講座をご検討ください。
玉掛け特別教育のポイントまとめ
本記事では、玉掛け特別教育に関して概要や受講目的、取得するメリットや受講方法を詳しく解説しました。 ポイントをまとめると以下の通りです。
- 玉掛け作業はさまざまな業種で行われる作業
- 玉掛けの方法を誤ったり知識が足りていなかったりすると大きな労働災害につながる
- 特別教育では労働災害の防止を最大の目的に必要な知識・技術を学ぶ
- 技能講習と特別教育は取り扱えるつり上げ荷重が違う
- 特別教育を受講することで玉掛け作業に正しく従事できたり仕事の幅が広がったりするメリットがある
- 玉掛け特別教育を受講する方法には、直接講習会場に受講する方法や出張講習の依頼、Web講座の受講がある
- Web講座であれば、時間や場所を選ばずに受講できるため忙しい方でも受講しやすい
SATでは、玉掛け特別教育の学科のみWeb講座を取り扱っております。 分かりやすい動画講義で、日々の隙間時間を有効活用しながら勉強できるため、これから玉掛け特別教育を受講される方はぜひSATのWeb講座をご検討ください。