建設業だけでなく、製造業や電気、自動車整備などの仕事で作業員を指導・指揮する立場として「職長」と「安全衛生責任者」という肩書きを持っている方々が必ずいます。
しかし、職長と安全衛生責任者の違いについて聞かれるとよくわからないという人もたくさんいらっしゃるかと思います。
この記事では、職長と安全衛生責任者は何が違うのか、講習ではどのような内容が学べるのかをわかりやすく説明していきます。
目次
職長教育とは?
職長と安全衛生責任者の違いを知るためには、まずは両方についてを知る必要があります。まずは職長について解説します。
職長は、労働者の安全の確保を目的に、作業におけるさまざまな管理を行う仕事です。
職長教育では、職長として従事する際に必要な知識や作業方法を身につけます。 仕事では、講習で身につけた知識とともに、人を指揮するためのコミュニケーション能力なども必要です。
職長教育の目的
職長という立場は、とても職務の内容が幅広いため、その分責任感も必要です。職務内容としては、作業員への作業の段取り説明、労働災害防止のための安全管理などがあります。
職長教育を受講することは、労働安全衛生法第60条で規定されています。
万が一、職長教育を修了していない人間が現場で指揮・指導している場合は、労働基準監督官から是正勧告を受けることになるので気を付けましょう。
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職長教育の受講内容
職長教育で学ぶ内容と講習時間も労働安全衛生法によって規定されています。受講内容は実務で必要となる作業員への指示や安全管理、災害の防止方法などです。
職長は指導・指揮する立場となりますので、リーダーシップや作業員を統率する力が必要となります。講習では、その点も含めて学ぶことができるので、しっかりと学びましょう。
講習科目と講習時間の詳細を下記の表にまとめましたのでご覧ください。
講習科目 | 講習時間 |
---|---|
作業手順の定め方 労働者の適正な配置の方法 |
2時間 |
指導及び教育の方法 作業中における監督および指示の方法 |
2.5時間 |
危険性又は有害性等の調査の方法 その結果に基づき講ずる措置 設備、作業等の具体的な改善の方法 |
4時間 |
異常時における措置 災害発生時における措置 |
1.5時間 |
作業に係る設備及び作業場所の保守管理の方法 労働災害防止についての関心の保持および労働者の創意工夫を引き出す方法 |
2時間 |
職長教育の講習時間は合計で12時間あり、2日間かけて受講することになります。職長という立場は作業員と違い一つのことに集中する立場ではありません。
特に、作業現場ではあらゆる危険要素が待ち構えています。そういった事故を未然に防ぐための講習内容となっています。
どの科目も実際の現場で必ず役に立つものばかりですので、しっかりと学びましょう。
安全衛生責任者教育とは?
安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者からと連絡や調整を行い、スムーズに作業を進めるために現場の安全を確保する仕事です。
安全衛生責任者教育では、統括安全衛生責任者と連携を組む際の知識を中心に学習します。
安全衛生責任者教育の目的
安全衛生責任者というのは簡単に説明すると、連絡・調整係です。必要となってくる業種は主に建設業と造船業です。
労働安全衛生法においても、「元方事業者は統括安全衛生責任者を選任し、関係請負事業者は「安全衛生責任者」を選任して、その旨を元方事業者に遅滞なく通報するとともに、定められた職務を行わなければならない(安衛法第16条)。」と定められており、職長教育と同様に講習を修了していないと罰則があります。
安全衛生責任者教育の受講内容
建設業では、職長と安全衛生責任者を兼任する場面が多く見受けられます。
そのため、厚生労働省は「職長教育」と「安全衛生責任者教育」を統合した「職長・安全衛生責任者教育」の実施を推進しています。
安全衛生責任者教育そのものは、「安全衛生責任者の職務等」、「統括安全衛生管理の進め方」という2科目が各1時間ずつの合計2時間の講習時間です。
ただし、「職長・安全衛生責任者教育」として実施される場合がほとんどなので、職長12時間+安全衛生責任者教育2時間の合計14時間の講習となります。
講習科目と講習時間の詳細を下記の表にまとめましたのでご覧ください。
講習科目 | 講習時間 |
---|---|
作業手順の定め方 労働者の適正な配置の方法 |
2時間 |
指導及び教育の方法 作業中における監督及び指示の方法 |
2.5時間 |
危険性又は有害性等の調査の方法 その結果に基づき講ずる措置 設備、作業等の具体的な改善の方法 |
4時間 |
異常時における措置 災害発生時における措置 |
1.5時間 |
作業に係る設備及び作業場所の保守管理の方法 労働災害防止についての関心の保持及び労働者の創意工夫を引き出す方法 |
2時間 |
安全衛生責任者の職務等 | 1時間 |
統括安全衛生管理の進め方 | 1時間 |
表で太線に囲まれた部分が安全衛生責任者教育で追加される科目です。
職長教育と安全衛生責任者教育の違い
ここまで「職長教育」と「安全衛生責任者教育」の目的や講習内容について説明してきました。では、この両者の違いはどこなのかを解説していきます。
講習時間の違い
安全衛生責任者教育の受講内容でも説明しましたが、職長教育の12時間とは違い、安全衛生責任者教育は2時間となっています。主に建設業が対象となるのですが、安全衛生責任者の職務はどんなものがあるのかを詳しく勉強します。
それに加えて、統括安全衛生責任者から連絡を受けた事項を関係者へ連絡するなどの知識も学習していきます。
安全衛生責任者教育は「何を」「誰に」「どのように」という連絡・調整役の立場であるということが重要になってくるので、そのあたりを重点的に学ぶことができます。
どちらも学科講習であり、実技はありません。ですが、講義内にグループ演習はあります。
受講対象者の違い
労働安全衛生法により、職長教育は「新たに職務につくこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者に行うこと(安衛法第60条)」と定められています。名称が職長ではない班長や工長といった名称の方も対象となります。
一方、安全衛生責任者は混在作業現場で一定の条件に該当する場合、選任することを義務付けられています。混在作業現場とは建設業のように1つの現場に複数の下請け業者が入っている現場を指します。そのため、建設業での請負人側の立場となる方が安全衛生責任者教育の受講対象となります。
職務的な違い
職長教育は現場のリーダーやまとめ役を担うので、作業の手順、教育・指導、作業方法の改善などを積極的に考える必要があります。指導者としての役割を果たすために必要な教育です。
一方、安全衛生責任者教育は、統括安全衛生責任者からの連絡に関する管理や2次、3次下請けがいる場合などの連絡・調整をメインに学習していきます。
職長教育の法改正内容について
令和5年(2023年)4月1日に法改正により、職長等の安全衛生教育の対象に新たな職種が追加されました。
具体的には下記のような職種です。
- 食料品製造業(うま味調味料製造業および動植物油脂製造業に関しては以前より対象)
- 新聞業
- 出版業
- 製本業および印刷物加工業
労働安全衛生法では、職長に対して安全衛生教育の実施が義務付けられています。
もし、修了していない方を従事させた場合、労働者・事業者に対して罰金制度が適用される可能性もあります。
そのため、対象の業種に従事する方で職長となる可能性がある方は、必ず講習を受講しましょう。
安全な職場を目指して
今回、職長教育と安全衛生責任者教育の違いについて紹介してきました。
どちらも作業員の上に立つ立場ですので、とても重要な役割です。役割と職務の観点からみると違いはありますが、両者に共通していえることは安全管理です。
労働災害をゼロにすることはなかなか難しいですが、ひとりひとりの意識で変えることは可能です。しっかりと学びましょう。
なお職長教育や安全衛生責任者教育は、どちらもオンラインの講習で学習可能です。SATの職長・安全衛生責任者教育または職長教育は、あらかじめ収録された講義動画を見て学習を進めますので、24時間いつでも好きな時に受講ができます。
また、両方の教育で必ず実施されるグループ討議(グループ演習は)もZOOMを用いてオンラインで実施します。
職長教育や職長安全教育はオンラインがとても便利でおすすめです。SATの講座はHPに講義サンプル動画を公開しているので、そちらもぜひご覧ください。
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職長・安全衛生責任者教育の目的や違いなどをおさらい
[sc_fs_multi_faq headline-0=”h3″ question-0=”職長・安全衛生責任者教育の目的は?” answer-0=”現場の安全や指揮を執ることが求められます。職務の内容が幅広いため、その分責任感も必要です。
職務内容としては、作業員への作業の段取り説明、労働災害防止のための安全管理、業務連絡や調整などがあります。” image-0=”” headline-1=”h3″ question-1=”職長教育と安全衛生教育の違いは?” answer-1=”職長教育は、労働者を指揮する仕事で、作業の工程や安全管理の改善などを中心に指揮者として従事します。
一方で安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者と連携を組み、スムーズに作業を進めるための現場の安全確保が仕事です。 講習では、それぞれの仕事に必要な知識を中心に学習します。” image-1=”” headline-2=”h3″ question-2=”職長教育の法改正内容は?” answer-2=”職長教育は、令和5年(2023年)4月1日に法改正され、以下の業種が受講の対象となりました。
①食料品製造業(うまみ調味料製造業及び動植物油脂製造業を除く)
②新聞業、出版業、製本業および印刷物加工業。
職長教育は、対象者に対して受講が義務付けられています。 ” image-2=”” count=”3″ html=”true” css_class=””]