消防設備士

消防設備士とは?需要が高い消防設備士の種類と仕事内容を解説

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地震などの災害による非常時はもちろん、防災は私たちの生活のおいて切っても切れないもの。そんな防災を支えている仕事のひとつが、消防設備士です。消防設備士とはどういった仕事か、仕事に就くための資格にはどういったものがあるのか見ていきましょう。

1. 消防設備士の仕事って?

日本の消防法では、消防法に記載の消防設備の整備・工事は有資格者でなければならないと定められています。該当の資格を有するのが消防設備士ですが、実際どのような仕事なのでしょうか。

1-1. 消防設備士とは

消防設備士とは、消防用設備などの点検、また整備や工事を行うことができる専門の資格を持った人のことです消防設備士が扱う消防用設備は火災報知設備や消火器などの家庭にも身近なものから、泡消火設備、スプリンクラー設備など多岐に渡り、取得している資格の種類によって扱える消防用設備の範囲が変わります。

1-2. 消防設備士が活躍する仕事

消防設備士として働くには、消防設備の点検や整備などを行っている専門の会社防災関係の会社に就職する方法もありますが、他にも多くの選択肢があります。例えば、設備全般の点検や整備を行っている電気設備系の会社に就職したり、不動産会社に消防設備士枠で就職する等です。

なお、消防設備士の資格は、工場や倉庫などで活用されていますが、不動産会社等ではビル管理関係がメインになるなど働く場所が少し変わってくる可能性はあります。

1-3. 消防設備士になる為には?

消防法によって政令で定められている消防用設備や特殊消防用設備などの工事や整備は、消防設備士にしか取り扱えない業務であり、点検においても消防設備士の資格と同等の資格を有するものでなければならないと定められています。つまり、消防設備の設置工事や整備・点検業務を行うには、消防設備士の資格が必須だということです。

さらに、消防設備士は資格を取った後にも定期的に講習を受講する義務があります。初回講習は免状を受けた直後の4月1日から2年以内、以降4月1日を基準に5年ごとの講習の受講が必要です。消防設備士の仕事は人の命にもかかわる仕事であり、消防法や設置される消防設備も日々変わっていくことから、このように定期的な講習が義務化されています。

1-4. 消防設備士の資格の種類

消防設備士として仕事をするための「消防設備士試験」には、大きく分けて甲種乙種があります。甲種は点検、整備、工事の全てを行える資格で、乙種は点検と整備のみが行える資格です。

さらに、甲種は特類のほか第1類から第5類の6つ、乙種には第1類から第7類の7つの区分があり、それぞれ取り扱える消防設備が異なります。消防設備士試験の中でもよく取得されているのが、乙種の第6類にあたる消火器が扱える資格と、甲種・乙種の第4類にあたる火災報知器が扱える資格です。

消防設備士として働くには、一般的に取得者の多い第4類や第6類の取得、または働く業界に合わせた資格が必要とされます。

【消防設備士の資格区分】

甲種

特類

特殊消防用設備等

甲種・乙種

第1類

屋内・屋外消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、パッケージ型消火設備等

第2類

泡消火設備、パッケージ型消火設備等

第3類

不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、パッケージ型消火設備等

第4類

自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備等

第5類

金属製避難はしご、救助袋、緩降機

乙種

第6類

消火器

第7類

漏電火災警報器

※特殊消防用設備は加圧防煙システム、総合消防防災システム、インバーター制御ポンプを使ったスプリンクラーなど。

1-5. 消防設備士の需要

消防設備士は、法律によって定められている消防用設備の点検や整備などを独占的に行うのが仕事です。近年、多くの災害や痛ましい事故の経験から防災についての意識が高まっています。今後、消防設備士の需要は拡大していくことが予想されます。

たとえば、大型商業施設をはじめ多くの施設では、消防法により防火設備の設置が義務付けられています。さらに、不特定多数の人が利用する国や地方自治体の施設においては、防火設備がしっかり作動するか、防火管理に問題がないか定期的な点検や地方自治体への報告も義務となっています。

さらに、不特定多数が利用する施設だけでなく、2006年には一般家庭においても消防用設備である火災報知機を設置する義務が取り決められました。

 

2. 消防設備士になるメリット

消防設備士とはどんな仕事か紹介してきましたが、消防設備士を仕事として選ぶメリットはどこにあるのでしょうか。

2-1. 消防設備の点検や工事に携われる

まず、消防設備士は、弁護士や公認会計士のように士業であり、消防設備士でなければできない業務区分が多くあります。消防設備の工事や整備に専業的に携わりたい人はもちろん、そのほかの点検や工事に付随して消防設備の点検や工事を行う職種を目指す人にも役立ちます。

2-2. 将来的な需要が見込まれる

先にも紹介したように、消防設備士の仕事はさまざまな施設や建物において必要とされているものです。今後更なる需要拡大が見込まれることから、益々活躍の場が拡がっていくでしょう

2-3. 人の命を守る使命感を持って働ける

消防設備士は、建物が火災に見舞われたときにいち早く対処できるようにするための消防用設備の設置工事や、その設備の点検・整備を生業とします。直接的なものではありませんが、人の命を救う、あるいは守ることになる仕事なのです。多くの人が安心して生活できるようにするための仕事だと使命感を持って働くことができます。

 

3. 消防設備士の資格を取得するには

ここまで、消防設備士について、消防設備士になるには消防設備士試験に合格する必要があることを紹介してきました。それでは、消防設備士試験とはどのようなものなのでしょうか。消防設備士試験への申し込み方法や試験内容などを簡単に紹介していきます。

3-1. 消防設備士の受験資格

消防設備士試験のうち、点検と整備のみの業務に限られる乙種は、第1類から第7類まで年齢や学歴などに制限がなく、誰でも受験資格を得ることができます。

しかし、一方で消防設備の工事が許される甲種は一定の受験資格が必要です。甲種の第1類から第5類については以下のいずれかを満たしていない場合、受験することができません。

【消防設備士試験 甲種第1類から第5類の受験資格】

学歴によるもの

大学、短期大学、高等専門学校において、機械や電気、建築などの学科や課程を修了したもの など

実務経験によるもの

・乙種消防設備士の交付を受けて2年以上の実務経験がある
・消防設備士補助の実務経験が5年以上ある
・消防法改正前の実務経験が3年以上ある など

既存資格によるもの

・電気工事士免状の交付を受けている
・電気主任技術者免状の交付を受けている
・アマチュア無線技士除く無線従事者資格がある
・1級建築士または2級建築士
・ガス主任技術者免状の交付を受けている
・給水装置工事主任技術者免状の交付を受けている など

さらに、甲種のうち特殊消防用設備等が扱える特類については、甲種の第4類と第5類、第1類から第3類のうちのいずれか1種、合計3種の甲種の資格を得なければ受験資格が得られません。

3-2. 試験日や試験場所

消防設備士試験は全国47都道府県で行われており、都道府県ごとに試験日が異なります。居住地以外でも受験できるため、受験を希望する都道府県の試験日をあらかじめ確認しておく必要があるでしょう。なお、試験の頻度は年2回で、4月から9月の前期、10月から翌年3月の後期に分けられます。

3-3. 受験の手続きや手数料

受験の手続きは、各都道府県の消防試験研究センターで配布される受験願書を必要書類と合わせて申請する書面申請の他、電子申請(インターネット申し込み)が可能です。

ただし、科目免除や受験資格の証明などで証明書などの添付書類が必要になる場合は電子申請での受付ができないので注意しましょう。なお、受験にあたっての手数料は以下の通りです。

甲種

5,700円(非課税)

乙種

3,800円(非課税)

※いずれも郵便窓口で払いこみます。

3-4. 試験科目や試験の形式

甲種、乙種ともにマークシート式の筆記試験と、記述式の実技試験があります(甲種の特類は実技試験なし)。筆記試験の内容は甲種・乙種で共通なのが、基礎知識問題、消防関係法令、各消防用設備の構造・機能・整備に関する問題です。甲種ではさらに工事に関する内容が追加、甲種の特類については火災や防火、工事設備対象設備等の構造・機能・工事・設備、消防関係法令の内容に変更されます。試験時間は、乙種が1時間45分、甲種が3時間15分、甲種の特類が2時間45分です。

3-5. 合格基準と合格率

消防設備士の合格基準は、各筆記科目40%以上、全体で60%以上です。合格率は、約20~60%で、第何類を取得するか甲種が乙種かで異なります。2019年2月の試験状況においては、受験者の多い甲種の第4類は合格率30.8%、乙種の第4類で合格率33.1%、乙種の第6類で合格率37.6%でした。

合格発表は、郵便はがき、またはホームページ上の受験番号公示により行われます。

4. 消防設備士に関連する資格

消防設備士に関連した知識を深める、あるいは仕事の範囲を広げるには他のどのような資格取得が考えられるでしょうか。消防設備士に関連する主な資格をいくつか紹介します。

4-1. 防災管理点検資格

消防法では、法令に定められた大規模建造物について年1回の定期的な防災管理点検を実施するように義務づけています。点検を実施しているのが、防災管理点検資格者です。防災管理、消防法に絡んで消防設備士との関連も深く、資格取得者は防災管理者にもなれます。

4-2. 危険物取扱者

危険物取扱者資格は、消防設備士と同様、消防試験研究センターで取り扱われている国家資格です。指定された危険物の点検や監督、資格を持たない一般人の取扱いにおいての立ち合いができます。消防設備士とは点検するものの種類が異なりますが、できる仕事の範囲を拡大することに役立ちます。

4-3. 電気工事士

電気工事士は、電気設備の工事に従事するための国家資格です。第一種と第二種があり、それぞれ従事できる工事の規模が異なります。関連する資格に、電気設備の保安監督に従事できる電気主任技術者がありますが、いずれも消防設備士の甲種の受験資格を得られる条件になっている資格です。甲種の受験資格取得のため、あるいはできる仕事の範囲を広げることに役立ちます。

5. まとめ

消防設備士の資格は、関連の業務に従事する場合はほぼ必須であり、今後の需要拡大も見込まれます。ただし、従事できる業務の範囲が甲種か乙種か、また何類かで変わってきます。従事する業界や仕事の内容に合わせて取得するようにすると良いでしょう。なお消防設備士の資格取得に関しては、動画教材も充実していますので、さまざまなスタイルでの勉強が可能で、無理のない範囲で資格取得を目指すことができます。

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