危険物といえばガソリン、危険物取扱者の職場といえばガソリンスタンドを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、危険物にはガソリン以外にもさまざまなものがあり、その知識は幅広い職場で活用できます。
この記事では危険物取扱者の資格の種類や、活用できる仕事内容について解説していきます。また、危険物取扱者の資格を取得するメリットも説明します。
目次
ガソリン以外にも幅広い危険物取扱者の仕事とは?
冒頭で述べたとおり、危険物取扱者には幅広い仕事があります。そもそも危険物はその性質により、以下の6種類に分けられています。
類別 | 性質 | 性質の概要 | 代表的な物品 |
---|---|---|---|
第1類 | 酸化性固体 | 他の物質を強く酸化させる固体であり、可燃物と混合したとき、熱、摩擦によって分解し、激しい燃焼を起こさせる。 | 塩素酸塩類 無機過酸化物 |
第2類 | 可燃性固体 | 火炎によって着火しやすい固体であり、燃焼が速く、消火することが困難である。 空気にさらされることにより自然に発火する。 |
硫黄 マグネシウム |
第3類 | 自然発火性物質 禁水性物質 |
空気にさらされることにより自然に発火する。 また、水と接触して発火したり、可燃性ガスを 発生するもの。(固体または液体) |
カリウム ナトリウム |
第4類 | 引火性液体 | 引火性を有する液体 | ガソリン 灯油 |
第5類 | 自己反応性物質 | 加熱分解などにより、比較的低い温度で多量の熱を発生したり、爆発的に反応が進行するもの。 (固体または液体) |
ニトロセルロース 硝酸エステル類 |
第6類 | 酸化性液体 | 混在する他の可燃物の燃焼を促進する性質を有する液体。 | 過酸化水素 |
上記にあげた危険物を取り扱える範囲は、資格により大きく甲種、乙種、丙種の3つに分かれています。
それでは、各種別の範囲と仕事について、解説していきます。
甲種
甲種危険物取扱者は、全ての危険物を扱えます。また、定期点検や無資格者への立ち会いも可能です。このため、ガソリンスタンドに限らず、以下のように幅広い仕事で活躍できます。
NO | 仕事 |
---|---|
1 | 化学工場や化学メーカー |
2 | 食品工場 |
3 | 自動車整備工場 |
4 | 設備管理 |
5 | タンクローリーの運転手 |
6 | 発電所 |
さらに実務経験を半年以上積むことで、危険物保安監督者になることも可能です。危険物保安監督者になると、全ての防火管理物で防火管理者になれる「甲種防火管理者」の資格を得られることもメリットといえるでしょう。
なお、甲種を受験するには、大学で化学を15単位以上学んだ方か乙種の免状取得後2年以上の実務経験がある方、または乙種の以下の免状を取得していることなどが条件です。
NO | 免状 |
---|---|
1 | 第1類または第6類 |
2 | 第2類または第4類 |
3 | 第3類 |
4 | 第5類 |
乙種
乙種は、1類から6類まで危険物の類別に資格が分かれています。試験に合格し免状を得た資格について、危険物の取り扱いや定期点検、無資格者への立ち会いが可能です。
例えば乙種4類だけを持つ方の場合は、ガソリンや軽油などの引火性液体についてのみ有資格者として扱われます。
とはいえ、多くの危険物を扱う職場では、引火性液体に関する「乙種4類」の取得でよい場合が多いといえるでしょう。ガソリンスタンドは代表的な職場です。
一方で、化学工場などに勤める場合は、取り扱う危険物にあわせた資格の取得が求められます。
乙種危険物取扱者も実務経験を半年以上積むことで、危険物保安監督者になることが可能です。ただし、免状を持っている類の危険物を扱う場合に限られます。
なお、甲種と異なり危険物保安監督者になったからといって自動的に甲種防火管理者の資格を得られるわけではありません。
丙種
丙種危険物取扱者は乙種4類のうち、限られた危険物の取り扱いや定期点検が可能です。丙種で扱える代表的な危険物として、以下のものがあげられます。
NO | 内容 |
---|---|
1 | ガソリン |
2 | 灯油 |
3 | 軽油 |
4 | 重油 |
一方で、無資格者への立ち会い業務はできません。例えば「一般の方がガソリンを取り扱うところを横でチェックする」といった業務です。
また、長年の経験があっても、甲種や乙種の資格を取得しない限り危険物保安監督者にもなれません。
危険物取扱者の資格を取得するメリット
危険物取扱者の資格を取得することには、さまざまなメリットがあります。ここでは主なメリットを4点取り上げ、それぞれについて解説していきます。
就職先の選択肢が広がる
危険物取扱者を求める職場は、たくさんあります。例えば、乙種4類ならばガソリンスタンドや石油関連の職場、設備管理など、幅広い職場が対象となります。また、乙種の他の類をお持ちの方は、化学工場や化学メーカーなどで役立てられます。
なかには危険物取扱者の有資格者を置くことが義務付けられている職場や、昇進の条件となっている企業もあります。このような職場において、危険物取扱者の資格を持っていると喜ばれることでしょう。
給与のアップなどが期待できる
危険物取扱者を求める企業のなかには、有資格者に対して毎月手当を支給する場合もあるため、資格の取得を収入の増加につなげることも可能です。
また、企業によっては報奨金を支給する場合もあります。一時金という形ですが、これもモチベーションのアップにつながるでしょう。
比較的短期間で合格でき、就職活動を有利に進められる
この後で解説するとおり、危険物取扱者試験はしっかり学習すれば、比較的短期間で合格が可能です。例えば、受験者の最も多い乙種4類だと40~60時間の勉強時間があれば合格ラインに到達できます。
他の資格と比べて、短期間で取得可能なことが魅力です。就職活動では他の応募者と差をつけられる意味で、有効な資格といえるでしょう。
危険物取扱者試験の難易度
同じ危険物取扱者試験でも、種類によって難易度は異なります。また、合格のためには科目ごとに6割以上の得点が必要です。ここでは難易度に加えて、合格率についても解説していきます。
試験の難易度
試験の難易度は、甲種・乙種・丙種それぞれで異なります。まず乙種からみていきましょう。
乙種の試験は、テキストなどでしっかり学習すれば合格可能です。ただし、文系出身の方は「物理学および化学」の科目を苦手に感じるかもしれません。その場合は、重点的な学習が必要です。
ただし、上位資格である乙種4類も、きちんと対策すれば決して難しい試験ではありません。
丙種の試験は、乙種よりもやさしくなっています。
これらに対して甲種の試験は、「物理学及び化学」の科目が難しくなっています。合格には高校レベルの物理や化学、数学の知識が求められます。くわえて、計算問題への対策も必要ですから、乙種よりも難しく合格しにくくなっています。
試験の合格率
危険物取扱者試験の合格率は、消防試験研究センターから以下のとおり公表されています。
試験区分 | 合格率 | ||
---|---|---|---|
令和5年度 | 令和4年度 | 令和3年度 | |
甲種 | 31.7% | 36.8% | 39.6% |
丙種 | 48.4% | 51.0% | 51.4% |
乙種の試験は類ごとに行われるため、合格率も異なります。
類 | 合格率 | ||
---|---|---|---|
令和5年度 | 令和4年度 | 令和3年度 | |
1類 | 70.0% | 69.4% | 70.5% |
2類 | 66.8% | 68.9% | 72.3% |
3類 | 69.2% | 71.1% | 71.0% |
4類 | 32.0% | 31.5% | 36.1% |
5類 | 68.4% | 71.0% | 71.0% |
6類 | 69.2% | 70.0% | 70.7% |
上記の表を見ると、乙種4類の合格率が低いことがわかります。もちろん、乙種4類だけ試験問題が難しいわけではありません。合格率が低い理由には、以下のものがあげられます。
NO | 理由 |
---|---|
1 | 受験者数が多い(受験者全体の過半数を乙種4類が占める) |
2 | 学校や職場などで資格の取得を求められ、しかたなく受験する方が多い |
3 | 乙種4類以外の類は乙種4類合格者が多いため、科目免除が受けられる。これにより試験の負担が減るため、合格率が上がりやすい |
したがって、乙種4類も決して難しくはありません。きちんと対策さえしていれば合格可能な試験です。
危険物取扱者はガソリンスタンド以外でも役に立つ資格
危険物取扱者はガソリンスタンドをはじめ、さまざまな企業で役立つ資格です。合格率も比較的高く、しっかり勉強をすれば合格も十分に可能です。
このため「何か資格を取りたいけれど、試験勉強が苦手」という方にもおすすめです。
合格により就職活動がしやすくなる、月々の収入がアップするといった効果も期待できます。目指す職場にあった資格を選び、受験を検討してください。