一陸特(第一級陸上特殊無線技術士)は、無線局における技術的操作に携われる国家資格です。業務独占資格という点に加え、通信技術の進歩と普及の拡大により、今後も高い需要が見込まれます。
しかし、一陸特の資格はどんな仕事に役立つのか、具体的な将来性があるのか、ご存じない方も多いかもしれません。こちらでは、一陸特の主な就職先と仕事内容、今後予想される一陸特の将来性について解説します。
一陸特の主な就職先と仕事内容
一陸特の資格でできる操作範囲、有資格者が求められる職場、具体的な仕事内容について見ていきましょう。
一陸特の操作範囲
一陸特を含む無線技術士は、扱える無線設備の範囲が資格の種別ごとに電波法で定められています。一陸特が操作できる無線設備の範囲は、「陸上無線局の空中線電力500W以下の多重無線設備で、30MHz以上の周波数の電波を使用する技術操作」です。
多重無線設備とは、1つの伝送路から複数の情報を送ることが可能な施設で、テレビ局や携帯電話の電波、防災無線、気象レーダーなどに用いられています。また、一陸特は最上位の資格ということもあり、下位の二陸特、三陸特に属する操作も可能です。
一陸特が求められる職場
一陸特が求められる職場は、テレビ局やラジオ局、携帯電話の移動通信サービス、警察や鉄道、高速道路などの陸上移動系無線局、衛星通信局など多岐に渡ります。多重無線設備を操作できるのは一陸特に限られるため、二陸特、三陸特よりも就職先の選択肢が広がるのは一陸特ならではの特権といえるでしょう。
一陸特の主な仕事内容
一陸特の仕事は、無線設備を操作して電波のやり取りを行うことや、施設の点検やメンテナンスなどです。テレビ局では中継車の機材操作の技術者や基地局の責任者など、重要なポストに就けるでしょう。
また、移動通信業者では無線基地局の建設や運用に関する現場指示業務、ネットワークセンター内の作業管理、障害復旧の現場作業員への指示など、高い技術力を生かした指導監督的な業務をする場合があります。
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一陸特の需要と将来性
次世代通信システム「5G」の導入が進んでいることを受け、一陸特の需要も高まりつつあります。そこで、5Gの普及にともなう一陸特の将来性について詳しく見ていきましょう。
ローカル5Gの運用
5Gとは、高い周波数帯を使用した広帯域の新しい通信技術です。以前の4Gと比べて、「高速・大容量・低遅延・多端末との同時接続」という特徴があります。
高速かつ大容量なデータ送信により、4Kや8Kといった高精細映像、AR・VRへの映像転送など、映像サービスの向上が期待されています。また、低遅延による自動車や建設機械の遠隔操作、過疎地における遠隔医療も実現可能です。さらに、端末の同時接続によるスマートホームや産業技術の革新など、5Gはコミュニケーションやビジネスに大きな変化をもたらすでしょう。
5Gの普及は企業や自治体のローカル運用から始まり、2020年では一般の携帯電話の導入が開始されます。しかし、5Gは高周波帯を使用するため電波が届きにくく、多くの基地局を設置しなければなりません。一陸特の有資格者は、膨大な基地局の運用やメンテナンスに必要とされるため、高い需要が続くことが予想されます。
5G基地局の保守
5G通信網が全国に普及するまで、おおよそ3年はかかる見込みです。ただし、基地局の建設が落ち着いたとしても、基地局の保守や点検の需要は3年以降も確実に続きます。企業や自治体のローカル運用の需要も見込まれるため、一陸特は将来性の高い資格といえるでしょう。
ただし、一陸特の有資格者として5Gの仕事に携わりたい場合、できるだけ早く資格を取得することが望ましいといえます。動き出しが早ければ早いほど、希望する企業に就職できる可能性が高くなるからです。
電気系の学科を卒業した、または総合無線通信士や海上無線通信士などを取得した方は、養成課程を修了すると一陸特の資格を取得できます。養成課程の要件を満たさない方でも、一陸特の試験は学歴や職歴などの受験資格が一切ないので、誰でも受験可能です。将来性の高い仕事に就きたい方は、一陸特の資格取得を検討することをおすすめします。
一陸特の需要は今後も高い
一陸特は無線局の操作ができる無線通信士の上位資格であり、多重無線設備の操作ができる唯一の資格です。テレビ局やラジオ局の中継局、鉄道や警察などの陸上移動通信系無線局、無線基地局の建設や復旧作業の指導監督など、さまざまな仕事を行います。また、一陸特の有資格者は、今後の普及拡大が見込まれる5G分野での活躍が期待されています。
企業や自治体内のローカル運用に加え、携帯電話通信網の運用が始まったことで、基地局の設置や保守、点検などの需要は途切れることはないでしょう。5Gの基地局設置は3年ほどがピークと考えられるため、できる限り早く一陸特を取得することをおすすめします。