衛生管理者とは、職場における労働者の健康管理と快適な職場づくりを専門家の立場から管理・実施することにより労働災害を未然に防ぎ、安全で衛生的な職場環境を確保する重要な任務を担っています。
その衛生管理者になるためには試験を受ける必要があり、また試験を受けるためには実務経験が必要になります。この記事では、そんな衛生管理者の実務経験の範囲について解説しています。
目次
衛生管理者の試験を受けるための条件
冒頭でも触れた通り、衛生管理者の試験を受験するには、学歴とそれに応じた労働衛生の実務経験が必要となります。
代表的な受験資格は次のとおりです。
- 学校教育法による大学又は高等専門学校(専修学校・各種学校等除く)を卒業した者で、その後1年以上労働衛生の実務に従事した経験があること
- 省庁大学校(防衛大学校・防衛医科大学校・水産大学校・海上保安大学校・気象大学校等)を卒業した者で、その後1年以上労働衛生の実務に従事した経験があること
- 学校教育法による高等学校又は中高一貫教育学校を卒業した者で、その後3年以上労働衛生の実務に従事した経験があること
- 高等学校卒業程度認定試験に合格した者で、その後3年以上労働衛生の実務に従事した経験があること
- 10年以上の労働衛生の実務に従事した経験があること
これら以外の学歴や実務経験も認められる場合がありますので、詳しくは労働衛生技術協会の公式サイトをご確認ください。
上記の受験資格を簡単にまとめると、以下のようになります。
- 一般的な大学や省庁大学校を卒業した者は、1年以上の労働衛生の実務経験があること
- 高等学校等を卒業した者は、3年以上の労働衛生の実務経験が必要であること
- 最終学歴に関係なく、労働衛生の実務経験が10年以上あること
受験の申請には卒業証明書の原本又は卒業証書の写し、事業主証明書が必要です。
各種書類の発行に時間がかかることもあるので、受験をする際には余裕を持って用意をしておくことをお勧めします。
労働衛生の実務経験とは
先ほど紹介した通り、衛生管理者の受験資格の中には「労働衛生の実務経験」があります。では労働衛生の実務経験とは一体どのようなものを指すのでしょうか。
労働衛生の実務経験とは、以下の13種類の業務が含まれます。
労働衛生の実務経験<13種類>
- 健康診断実施に必要な事項又は結果の処理の業務
- 作業環境の測定等作業環境の衛生上の調査の業務
- 作業条件、施設等の衛生上の改善の業務
- 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備の業務
- 衛生教育の企画、実施等に関する業務
- 労働衛生の統計の作成に関する業務
- 看護師又は准看護師の業務
- 労働衛生関係の作業主任者としての業務
- 労働衛生関係の試験研究機関における労働衛生関係の試験研究の業務
- 自衛隊の衛生担当者、衛生隊員の業務
- 保健衛生に関する業務
- 保健所職員のうち、試験研究に従事する者の業務
- 建築物環境衛生管理技術者の業務
これらの実務経験に該当する項目を事業場代表者(社長・人事部長・総務部長・支店長等)に証明してもらうことで、受験資格として認められます。もし担当している業務が受験資格に該当するか分からない場合は、労働衛生技術協会に問い合わせて確認しましょう。
代表的な受験者は総務部・人事部・労務部等で上記の業務に携わる人が中心ですが、事業場の清掃、給湯室の清掃・衛生管理、デスク回りの整理整頓、備品の安全確認といった業務を担当する人でも作業環境管理等に該当します。
つまり、何らかの業種での社会経験が1年以上ある人ならば、自分が意識をしないうちに受験資格を満たしている可能性がありますので、これまでの職歴をチェックしてみましょう。
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そもそも衛生管理者とは
冒頭でも少し触れたとおり、衛生管理者とは労働者に対して健康や安全の管理業務を行うための資格です。
労働安全衛生法では、アルバイト、パートタイマーを含み常時50人以上の労働者を使用する事業場について、その事業場の規模に応じて1人以上の衛生管理者を選任することを義務づけています。
違反をした場合は50万円以下の罰金となります。
また、50人未満の事業場も安全衛生推進者等の選任義務があり、労働衛生環境に関する法的規制を同様に受けます。
衛生管理者の免許には、第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許、衛生工学衛生管理者免許があります。
このうち第一種衛生管理者、第二種衛生管理者免許を取得するには、厚生労働大臣が指定する試験機関が行う試験に合格する必要があります。
試験は全国7ヶ所に設けられている安全衛生技術センターで毎月1~4回行われています。
受験チャンスが多いのも衛生管理者の特徴です。
また、遠方に住んでいて試験会場へ行くことが難しい受験生のために出張試験も行われています。試験日等の詳細は各センターで作成している「免許試験案内」や安全衛生技術試験協会本部のWebサイトで公表されていますので、ご確認ください。
衛生管理者は、受験者数が年間で約10万人いる人気の国家資格です。令和4年(2022年)度の試験では、第一種の受験者数が68,066人、第二種は35,199人でした。
なお令和4年度の合格率は第一種が45.8%、第二種が51.4%でした。(参照:安全衛生技術試験協会 統計データ)
簡単な試験ではありませんが、実務経験を満たし、試験に必要な勉強をしっかりと行えば合格することができる試験です。
衛生管理者の業務内容
衛生管理者の主な業務内容は以下のものです。
作業環境の管理
衛生管理者には、週1回職場を巡回し、衛生環境や設備、作業方法を確認する義務があります。労働者が安全に働ける環境を整えることが衛生管理者の仕事であるため、巡回して何か問題点を見つけたら、早急に対策を取らなくてはいけません。
作業管理
作業管理とは、設備や作業をする方法が安全かどうかを確認し、改善する業務です。設備や作業条件の衛生上の改善、保護具・救命用具等の点検、作業道具の安全性の管理などを行います。
健康管理
従業員の健康管理をすることも、衛生管理者の重要な仕事です。衛生管理者は、従業員に健康診断を受けさせる計画を立て、健康に異常がある労働者を発見した場合には処置を行います。
また、労働者への衛生教育や健康相談の対応をすることもあります。
第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の違い
では、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者は何が違うのでしょうか。それぞれの特徴を見ていきましょう。
【第一種衛生管理者】
第一種衛生管理者免許を有する者は、すべての業種の事業場において衛生管理者になることができます。
第一種衛生管理者の試験範囲は、関係法令(有害業務に係るもの・有害業務以外に係るもの)、労働衛生(有害業務に係るもの・有害業務以外に係るもの)、労働生理の計5科目です。
【第二種衛生管理者】
第二種衛生管理者が対応できる業種は商業、サービス業などに限定され、有害業務に係る作業場では衛生管理者になる資格はありません。
有害業務とは、農林畜産業・鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・水道業・熱供給業・運送業・自動車整備業・機械修理業・医療業・清掃業のことを指しています。
第二種衛生管理者の試験範囲は、第一種衛生管理者試験から有害業務に係るものを除いたもの計3科目です。
このように、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者は対応できる業種の範囲と、試験科目の範囲が違うのです。
ちなみに、第二種衛生管理者の資格を取得後に特例第一種衛生管理者試験を受け、合格することで第一種衛生管理者の資格を取得することができます。
試験の合格基準と免許取得の流れ
第一種・第二種衛生管理者試験に合格するには、それぞれの試験科目ごとの得点が40%以上であり、かつ全科目の合計点が満点の60%以上であることが必要です。
試験合格後に東京労働局で免許申請を行い、同局から免許証が交付されて免許を取得することができます。
衛生管理者はとても重要な資格
第一種衛生管理者、第二種衛生管理者免許を取得するには、厚生労働大臣が指定する試験機関が行う試験に合格する必要があります。
受験資格・実務経験の要件がありますが、そこまで厳しいものは求められていません。
実務経験については、多くの人が事業場の清掃や作業環境の改善行動を実施するので、一般的な社会人経験が1年以上あれば、基本的に該当するのではないでしょうか。
快適な職場環境づくりだけではなく、労働基準法、労働生理といったことも学習するので、勉強したことは職場だけではなく自分自身を守る知識になります。
また、衛生管理者資格を持つことで資格手当の支給、総務や人事部門での活躍、転職が有利になる可能性もあります。
衛生管理者は常に一定の需要があり、勉強内容も有意義なものですし、受験できる機会も多く教材も充実しています。社会的価値がある資格ですので、受験資格がある方は是非チャレンジしてみてください。